2019年09月24日

エマーソン弦楽四重奏団の技量と知性を惜しむことなく注ぎ込んだショスタコーヴィチ全集


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エマーソン弦楽四重奏団が1994年から99年にかけてアスペン音楽祭で行なったショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全曲演奏会のライヴ録音で、その技量と知性を惜しむことなく注ぎ込んだ全集である。

ロシア人作曲家ショスタコーヴィチ(1906-75)はソ連時代という苛酷な時代に生きた音楽家であった。

芸術家といえども社会主義国家建設に寄与することが求められたし、戦争の現実も作曲家の運命を翻弄した。

またスターリンと党との関係も常に緊張したものであり、眉間に皺を作らないでは1日たりとも過ごせない生涯を送ったと言えよう。

ショスタコーヴィチの残した弦楽四重奏曲は全部で15曲で、ほぼ生涯の全域にわたって作られている。

もっとも第1番は1935年、第2番は1944年に作られているから、スタートは遅かったと言えよう。

だがそれだけにショスタコーヴィチが成熟した技法と人間としての明確な自覚を持ったうえで内面を綴った作品ばかりとなっている。

しかもそれらの中にはしかめっ面のイメージとは対照的とも言える陽気さ、快活さすら刻印した作品も見られるから、弦楽四重奏の世界はショスタコーヴィチの素顔を装うことなく、率直に記した肖像画であると言ってもよいであろう。

したがって、ベートーヴェンのそれとともに弦楽四重奏団にとっては踏破、征服すべき目標としてそびえ立っている。

1976年に創設されたアメリカのエマーソン弦楽四重奏団は作品や演奏の機会に応じて第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが入れ替わる(差がほとんどわからない)という柔軟なスタイルを持つ稀有なクヮルテットとして知られる。

しかしそれ以上に彼らの真摯かつ誠実な作品へのアプローチが毎回聴き手を感動させてきた実績を誇っている。

エマーソン弦楽四重奏団のショスタコーヴィチは、美しい音色と軽やかなリズム感を基調とした、洗練された現代的な演奏だ。

かつてのボロディン弦楽四重奏団のように聴くのが辛くなる程の冷徹さはなく、陰影の付け方も充分感じられ豊かである。

しかもベートーヴェンやメンデルスゾーンでは持て余し気味だった彼らの演奏技巧が、ここでは存分に羽ばたいている。

柔らかくひそやかな弱音(第1番第1楽章、第10番第1楽章、第14番第3楽章コーダ)からバリバリと音を割った暴力的な強音(第1番終楽章コーダ、第3番第3楽章、第8番第3楽章)まで、表現の幅が実に広い。

第7番第3楽章や第12番第2楽章冒頭での激情の猛烈な迸りなど、作曲者の想像した音世界をも超えてしまったのではないだろうか。

ここには深刻かつ激越な感情をむき出しに表現した素顔のショスタコーヴィチがあり、彼らの表現力の凄まじさは聴き手の胸を鋭く突き、痛いほどだが、感銘は交響曲に匹敵する。

作品を気迫と集中力をもって再現しながらも、もう一つ別の視点から作品を俯瞰して見据えていくようなアングルの大きさも特筆され、ショスタコーヴィチ作品の豊かさを聴き手がじっくり味わっていくことを可能にしている。

全15曲を聴くと、生きることは決してなまやさしいことではない、と諭されるかのようで、忘れられない教訓を残してくれる。

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classicalmusic at 12:32コメント(0)ショスタコーヴィチ  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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