2019年04月24日
シュタルケル、最も充実した全盛期の快演3曲
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ハンガリーに生まれた現代最高のチェリストのひとりだったシュタルケルは、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を3度録音したが、この2度目の録音の印象が強い。
全盛期の超人的なテクニックと知的なアプローチで、かけがえのない魅力を形成しつつ、密度の濃い演奏を繰り広げている。
バックのドラティを含め民族色の非常に強いものと思いきや然に非ず、基本はかなり洗練された表現が主体となっており、バランスの良い秀演になっている。
濃厚な民族性を表に出した熱狂的な演奏が多い中で、シュタルケルはむしろ冷静に、書かれている音楽を忠実にしかも直截的に表現するという方法で曲を仕上げている。
それだけに第2楽章では、ドヴォルザーク特有のボヘミア色や望郷感といったことよりも、音楽そのものの美しさを伝えようとしているように思える。
シュタルケルのチェロはやや線が細くまるでヴァイオリンの音色のように滑らかで柔らかくしなやか、溢れるばかりの歌心を持ったリリックな演奏だ。
その一方で抒情に流れない剛直とも言える張りのある力にも漲っていて、ドラティの大胆で直截な表現のオケとよく合っている。
勿論容赦無い超絶技巧の披露も忘れてはいないが、全体的に癖の無いシンプルな解釈が聴き所だろう。
2曲めのコル・ニドライは弾圧によって改宗を余儀なくされたユダヤ人達の懺悔と改悛をブルッフが叙事詩風に作曲したもので、独特の途絶えがちで咽ぶような告白の語り口調の前半と、精神的な開放感をもたらす後半部から成る独奏チェロとオーケストラの為の小品だ。
この技巧とは縁の無い、歌心に溢れた音楽を、シュタルケルは誇張を避け、ダイナミズムと緊張感の持続で表現しきっていて、筆者にとって原体験的な名演ながら、未だにその魅力を失っていない。
一方チャイコフスキーのロココ風の主題による変奏曲は、かなりヴィルトゥオーゾ的な作品ではあるが、シュタルケルは技術的に余裕があり、冷静な表情としなやかなボウイングが、旋律から落ち着いた情感を引き出している。
感情を完全にコントロールした客観的な解釈の中に、さりげない品の良さを漂わせた魅力的な音楽作りと言える。
アンタル・ドラティ率いるロンドン交響楽団のサポートも巧妙で、彼の指揮は極めて引き締まっており、緻密の限りをつくし、ドライで明確な職人芸を思わせるが、意欲が充実していて迫力に溢れている。
1962年及び64年の録音だが、マーキュリーが誇る高音質録音だけに音質が非常に良く、クリアーだがデリカシー充分で、チェロが眼前で弾いているようだし、オケの楽器も目に見えるようだ。
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