2019年08月04日
ジュリーニ円熟期のユニヴァーサルへのレコーディング集大成ボックス
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カルロ・マリア・ジュリーニ(1914-2005)がユニヴァーサル傘下に遺した全音源を42枚のCDに纏めたボックスで、殆んどがウィーン・フィル、ロサンジェルス・フィル及びシカゴ交響楽団時代の、彼の円熟期のレコーディングになる。
ジュリーニはデビュー当時からEMIと契約していたので、ライヴは別として壮年期までのディスクは彼の死後逸早くEMIから全3巻都合30枚に纏められ、また晩年のソニーへの録音集は22枚のセットでリリースされたが、グラモフォンとデッカ盤がようやっと今年になって集大成された。
勿論これらは総て既出音源で、デッカに入れたニュー・フィルハーモニアとのモーツァルトの交響曲2曲とプラシド・ドミンゴとのアリア集を除いて個別に入手可能だ。
ロサンジェルス・フィルとのベートーヴェン及びブラームスの交響曲集は当初からその細部に至る緻密な再現と溢れるようなカンタービレの美しさで評価が高かった。
このセットにはウィーン・フィルとの録音も収録されているので、両オーケストラのサウンドの違いやジュリー二の演奏スタイルの変化を比較することができる。
後年ジュリーニはレパートリーをかなり絞って、自身で納得した曲だけを繰り返して演奏するようになった。
CD13ブリテンの『テノールとホルン及び弦楽のためのセレナード』はCD22フォン・アイネムのカンタータ『あとから生まれる人々に』と並んで彼が採り上げた数少ない20世紀の作曲家の作品だ。
前者では神秘の中に描き出す繊細で映像的な情緒が秀逸で、シカゴの首席デイル・クレヴェンジャーのホルン・ソロとロバート・ティアーのテノールと相俟って名演の名に恥じない演奏だ。
協奏曲ではいわゆるスタンダード・ナンバーが並んでいるが、ホロヴィッツ、ミケランジェリ、ベルマン、ツィマーマンなど錚々たるソリストが協演している。
もうひとつ興味深いのはヴェルディのオペラ『リゴレット』『トロヴァトーレ』で、ジュリーニは晩年オペラから手を引いてしまう。
それは彼自身がインタビューで答えているが、飛行機を使ってオペラハウスを掛け持ちして歌い続ける歌手達は、既に声が疲れている上に、時間がないために指揮者の要求する充実した稽古にも参加せず、またそれぞれのマネージャーも芸術的な仕上がりを重視しなくなってしまったという事実からだ。
大歌手と言われた人達の、言ってみれば最後の時代がジュリー二の晩年と一致していたのは幸いと言う他はない。
ここではカップッチッリやドミンゴ等がその健全な美声を思う存分謳歌していた、声の饗宴が記録されている。
アバドやムーティによって原典主義が唱えられ、歌手達の勝手な表現や華美な装飾音などが一掃され、オペラの上演にとって文学的な追究やストーリーの整合性に重点が置かれるようになると、歌手は指揮者の持ち駒となって必然的に小粒にならざるを得ない。
ジュリーニもまた個性豊かでおおらかな歌唱をある程度許してはいるが、作曲家がスコアに書き記した音符には最大限の敬意を払っていることは言うまでもない。
最後にヴェルディの『レクイエム』に関しては彼の第1回目の素晴らしい録音がEMIに遺されていて、正直言ってこちらのベルリン・フィルとの新録音はいくらか分が悪い。
旧録音には壮絶な覇気があり4人のソリストもシュヴァルツコップ、ルートヴィヒ、ゲッダ、ギャウロフが当時臨むことが出来た最高のメンバーだったこともあって、この演奏は残念ながら彼らには到底及ばない。
中でもバスのサイモン・エステスは癖が強くメフィストフェレスのような歌唱に疑問が残る。
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