2019年08月31日

幽玄に響くホプキンソンのテオルボ、バッハの『無伴奏チェロ組曲』前半3曲


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



リュート界の大御所、ホプキンソン・スミス自身が編曲したバッハの『無伴奏チェロ組曲』第1、2、3番が収録されている。

バロック・リュートは楽器によって響きに特徴があり、彼が使用している楽器はジャーマン・テオルボで1986年ジョエル・ヴァン・レネップが用いられている。

チェロの重厚な響きを意識してしまうが、ホプキンソンは柔らかい響きでリュートの素朴な味わいが魅力となって、さらにバッハの深い音楽性も感じられる素晴らしい演奏を聴かせる。

ある作品を指定された楽器とは機能の異なる楽器で演奏する場合、編曲が不可欠になってくる。

ホプキンソンには当然ながら無伴奏チェロのために作曲された楽譜をテオルボ用に移し直す必要があった。

この編曲は彼自身が行っているが、バッハの音楽性を的確に捉えたホプキンソンのセンスの良い編曲と心地よい演奏が秀逸だ。

このディスクを聴いて最初に気が付いたことはオリジナルの調性から長三度高く移調してあることだ。

正確に言えば第1番ト長調はロ長調に、第2番ニ短調は嬰へ短調に、そして第3番ハ長調はホ長調に聴きとれる。

これは彼の使用しているテオルボの音域とその表現力を最大限活かすためだと思われるが、実際チェロで弾くような荘重で力強い印象はなく、意外にも軽やかで幽玄とも言うべき繊細で柔らかな感触を引き出している。

しかもそこからは自然で無理のない対位法の綾が紡ぎ出される。

それは日頃通奏低音をイメージさせる楽器とは全く趣を異にしている。

ちなみにこのセッションで演奏されているジャーマン・テオルボはシルヴィウス・レオポルト・ヴァイスによって1720年に考案され、製作されたもののコピーで、基本的に13から14コースの弦が張られているが、高音の2弦を除いてはユニゾン、あるいはオクターヴのダブル・ストラングなのでジャケットの写真に見えるように弦の数は24本以上になる。

旋律楽器のチェロ1本のために書かれた楽譜を和音楽器のテオルボ用に移す場合、チェロでは省略された対位法の隠された旋律や和声を実際に響く音として復元しなければならない。

これはホプキンソンがライナー・ノーツでも書いているように、バッハがある楽器から他の楽器のためにアレンジした手法に沿って、できるだけ忠実に再現するように努力したようだ。

バッハは自作は勿論、当時のヨーロッパの作曲家の作品をさまざまな楽器編成のオーケストラや独奏楽器用に編曲したアレンジの大家でもあったことを考えれば、編曲ものを原曲と照らし合わせることによって、逆に単旋律に凝縮されたポリフォニーの音楽を導き出すことも可能だろう。

しかしそれがチェロで弾くのとは全く違った、独自の静謐な世界を創造しているのが興味深く、またバッハの楽曲の持つ融通性だけでなくその普遍性を改めて認識した。

録音は2012年10月にグルノーブルで行われ、テオルボの特質を良く捉えた澄み切った音質が特徴だ。

今回は前半の3曲のみが収録されているが、後半の3曲も彼は以前に録音していて、それらも現在入手可能だ。

ちなみに第5番に関してはバッハ自身の編曲が存在していて、ホプキンソンがリュートで演奏したものが既に『バッハのリュートのためのコンプリート・ワークス』として同じくフランス・ナイーヴから2枚組のボックス・セットでリリースされている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 12:41コメント(0)バッハ  

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ