2019年04月27日

新即物主義の極致、第1次ジュリアードSQのエポックメーキングなバルトーク&新ウィーン楽派録音集


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現代を象徴するクヮルテットとして、ジュリアード弦楽四重奏団の果たした役割は計り知れないものがある。

戦前のヨーロッパの演奏伝統を打ち破るように、第2次世界大戦直後のアメリカで1946年に設立されたジュリアード弦楽四重奏団は、4人のメンバーの高い技量を背景とした、4つの弦の技術的、音楽的均質性と感情を削ぎ落としたドライで直線的な表現で世界の好楽家に衝撃を与えた。

1960年代後半になり、彼らはより柔軟な演奏表現へ変化してゆくが、このセットには1949〜52年の初期録音のみで構成されているため、新即物主義の極致のようなスタイルが楽しめると同時に、当時の聴き手の驚きも追体験できる。

第2次世界大戦後の弦楽四重奏演奏において、ジュリアード弦楽四重奏団の出現はまさにエポックメーキングな出来事であった。

ジュリアード音楽院長で作曲家のウィリアム・シューマンの提言もあり、結成当初より同時代作品も積極的にレパートリーに組み込むという基本姿勢によって一貫した活動を展開、1947年12月のデビュー・コンサートでも、ベルクの『抒情組曲』がとりあげられ評判を呼び、バルトークの弦楽四重奏曲についても1948年の公演から積極的に紹介するようになった。

シェーンベルク作品については、本人の前での演奏もおこなっており、その際、シェーンベルクに予想以上にワイルドな演奏と評されながらも解釈について快諾されたというエピソードからもうかがえるように、当時のジュリアード弦楽四重奏団の演奏は非常に過激なものだった。

今回、ヒストリカル音源のCD化でマニアに話題の「WHRA(West Hill Radio Archives)」より登場する6枚組セットには、そんな過激な時期の彼らによる、バルトークの弦楽四重奏曲全集と、新ウィーン楽派の弦楽四重奏曲集が収められている。

バルトークについては、以前、イギリスのPEARLレーベルから、新ウィーン楽派作品集については、フランスのUNITED ARCHIVESレーベルより復刻盤がリリースされたが、今回は、オリジナル・リリース国でもあるアメリカのレーベルからのリリースで、2011年に米コロンビアのLPから新たにデジタル・トランスファーがおこなわれている。

戦前の弦楽四重奏と言えば、カペー弦楽四重奏団やレナー弦楽四重奏団のように第1ヴァイオリンが技術的にも音楽的にも抜きん出ていて、第1ヴァイオリンがアンサンブルを主導し、チームの音楽性を支配することによって演奏を作り上げていた。

第1ヴァイオリン奏者の名を団体に冠しているのも、そうした事情を象徴していたが、また演奏解釈上も旋律を曲線的に捉え、テンポの緩急を多用した、情緒あふれる演奏スタイルが主流であった。

そのような時代にジュリアード弦楽四重奏団は出現し、完璧な技巧と有機的で密度の高いアンサンブルで未だかつてない新しい様式のクヮルテット美学を確立した。

その功績の多くは第1ヴァイオリンのロバート・マンに負うものであろうが、ヴィオラにしてもチェロにしても、みな出色の演奏能力を備え、音楽創造の理念と水準は極めて高い。

米コロムビア社(現Sony)と契約後、新ウィーン楽派の作品やバルトークの弦楽四重奏曲全集を録音し、ジュリアード弦楽四重奏団の名は、1948年に開発されたばかりだった「LPレコード」という新しい録音媒体を通じて世界に広まった。

その背景となったのは、1920年代から30年代にかけて現代音楽の旗頭として活躍したコーリッシュ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者、ユージン・レーナーとの交流によるところが大きい。

レーナーはシェーンベルクやバルトークと交際があり、作曲者直伝の奏法をジュリアードの面々につぶさに教え込んだ。

特にバルトークは、レーナーの助言が大きく物を言っていて、現代では古典となった名曲群が6曲まとまった史上初のレコードであり、その生命感溢れる衝撃的音楽を見事にクリアした卓越した至芸には驚き入るばかりだ。

彼らはバルトークの弦楽四重奏曲全集を3回録音しているが、回を追ってアンサンブルの精緻さは増してくるものの、それにかまけるというか、テクニカルの面白さにのめり込み、初回の初々しさや覇気が減退していったように思われてならない。

筆者にとっての聴きはじめがこのジュリアードのモノーラルの演奏で、思い入れがあるのかもしれないが、今他の演奏と聴き比べてみても、この録音は未知の世界に入ってゆく期待感と、出会いの感動に満ち、想像力を掻き立て、胸をときめかせるものがある。

それに対し後のステレオ録音の方は、細部の彫りを巧みにこなす職人的な腕前の披露に終わりがちだ。

シェーンベルクの弦楽四重奏曲全集は、前述のように1949年に作曲家をロスアンジェルスに訪ねたことが、この演奏への驚異的な成果を生んだものと思われる。

ベルクの弦楽四重奏曲と『抒情組曲』、ウェーベルンの『5つの断章』もバルトークと並んでジュリアードが最も得意としたレパートリーで、切り込みの鋭い情熱的なボウイングで語り尽くされた驚異のアプローチを展開している。

彼らの、演奏という名の創造行為には、高度の緊張と献身的な情熱が漲っているのだが、それこそは、こうした作品を弾くのに最も適合した条件である。

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classicalmusic at 20:09コメント(0)ジュリアードSQ | バルトーク 

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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