2022年02月25日

芸術家は政権の下僕にはなり得ない、ショスタコーヴィチの最良の理解者、コンドラシンの遺産


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キリル・コンドラシンは1965年から75年にかけて手兵モスクワ・フィルハーモニーとショスタコーヴィチ交響曲全集を完成させていた。

このボックスは本家メロディアからの11枚のCDのリイシュー盤で、既に現在入手困難になっているのが惜しまれる。

個別売りではまだマーケティングに流通しているようだが、曲によってはこのセットと同様法外なプレミアム価格がつけられている。

以前のヴェネツィア・レーベルからの12枚組と比較すると選曲、音質ともに優っていて、こちらが全曲ステレオ録音の音源を纏めているのに対してヴェネツィア盤は交響曲第13番を62年のライヴを加えた2種類、コーガンとのヴァイオリン協奏曲第1番を収録している。

メロディア盤はヴァイオリン協奏曲はオイストラフとの第2番のみだが、交響詩『10月革命』、カンタータ『我が祖国に太陽は輝く』及びオラトリオ『ステパン・ラージンの処刑』を加えたよりコンプリートなオーケストラル・ワーク集になっている。

コンドラシンは交響曲第13番の初演以来、ショスタコーヴィチの作品の最良の理解者だったことから、それらの演奏がある意味で理想的な解釈に基いている貴重な遺産でもある。

それは大指揮者ムラヴィンスキーが多くの初演を果たしながら、後年ショスタコーヴィチから離れてしまった事実とは鮮やかな対照を成している。

コンドラシンの亡命はかえって作曲家の精神を受け継いだ選択ではなかっただろうか。

15曲の交響曲の他に幸いドン・コサックの首領の最期を描いた『ステパン・ラージンの処刑』が収録されている。

この作品も極めて政治的な批判精神を扱っているので、コンドラシン面目躍如のレパートリーだったと思われる。

ステパン・ラージンが処刑場に引き出され、民衆から唾を吐きかけられるシーンは、ショスタコーヴィチ一流の情景描写が際立っているし、民衆がこの処刑に矛盾を感じ始めるあたりから、彼の作曲技法は殆んど精緻な心理描写になる。

コンドラシンの指揮はこうした心理的変化を熟知した恐るべき深みをもっている。

また彼が当時音楽監督だったモスクワ・フィルのミリタリー的な機動力も聴きどころで、抒情的な歌心にも不足していないし、決して硬直感もない。

むしろムラヴィンスキー、レニングラード・フィルの方が冷徹に感じられる。

この全集が録音された当時、ソヴィエトでもようやくステレオ録音が一般的になって、音質も西側並みに向上していた。

高音は及第点と言ったところで低音部も良く響いて色彩感にも不足していない。

欲を言えば中音域にもう少し厚みが欲しいところだが、総てが良好なステレオ録音だ。

ただし交響曲第13番『バビ・ヤール』は1967年の歌詞改訂版が使われている。

この作品の初演及び2日後の再演以降、当局からソヴィエトのユダヤ人迫害を仄めかす部分について歌詞を変更しない限り上演禁止の通告を受けた。

この演奏では音楽はオリジナルだが、歌詞の一部は詩人エフトゥシェンコ自身の改作によっている。

バスのエイゼンが美声だけに残念だ。

ちなみにディスコグラフィーを見るとコンドラシンはこの曲を5回録音している。

初演メンバーによる1962年のモノラル録音はプラガからハイブリッドSACD化されているが、最も音質に恵まれているのは80年にバイエルン放送交響楽団を指揮したライヴで、バスは英国人シャーリー・カークがロシア語で健闘している原語録音だ。

レギュラー・フォーマットとSACD盤がタワーレコードからリリースされている。

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classicalmusic at 13:48コメント(0)ショスタコーヴィチ | コンドラシン 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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