2019年05月02日

音楽の偉大な革命家シェーンベルクの側近中の側近、現代音楽のスペシャリスト、コーリッシュの遺産


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ルドルフ・コーリッシュは、オタカール・シェフチークの下でヴァイオリンの修練を積んだオーストリア出身のヴァイオリニスト。

シェーンベルクから作曲の指導を受けたのが縁となって、シェーンベルクの私的演奏協会にプレイヤーとして参加するようになった。

彼が弦楽四重奏団を結成したのは、シェーンベルクの助言あってのことだった。

はじめウィーン弦楽四重奏団と名乗って演奏活動をしていたが、1927年に人事を一新し、コーリッシュ弦楽四重奏団として活動を継続する。

コーリッシュ弦楽四重奏団は、シェーンベルクの縁から、新ウィーン楽派の作曲家の作品を数多く手がけ、中でもアルバン・ベルクの『抒情組曲』の初演は、コーリッシュ弦楽四重奏団の大手柄だった。

新ウィーン楽派の作曲家の作品を多数手がけた業績から、コーリッシュ弦楽四重奏団は、現代音楽のスペシャリストと見做され、バルトークから弦楽四重奏曲の初演を依頼されるまでになった。

この「ルドルフ・コーリッシュを称えて」というCD6枚組は、そうした現代音楽のスペシャリストとしてのコーリッシュに焦点を当てた選曲になっている。

なお、このCD集では、プロ・アルテ弦楽四重奏団という名義の使われた録音が存在するが、この弦楽四重奏団は、アルフォンス・オンヌーらの団体の衣鉢を継いだものである。

オンヌーが1940年に戦死してしまったため、この団体は一旦解散を余儀なくされている。

一方、アメリカに渡ってきたコーリッシュは、自分の弦楽四重奏団を維持できなくなり、1942年頃に解散してしまっていた。

師匠のシェーンベルクの肝入りで1943年にウィスコンシン大学に就職したコーリッシュは、かつての自分の弦楽四重奏団の第2ヴァイオリニストや、ウィスコンシンに在住していた旧プロ・アルテ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者らに声をかけ、プロ・アルテ弦楽四重奏団を再結成したのだった。

その後、コーリッシュの努力によって、このプロ・アルテ弦楽四重奏団はウィスコンシン大学の常設団体となり、メンバーを変えながら、今日も演奏活動を続けている。

このCD集には、シェーンベルクの弦楽四重奏曲の全曲がコーリッシュ弦楽四重奏団のメンバーで演奏されている。

まさに彼の演奏こそシェーンベルクの精神そのものと言ってよく、その感じはギーレン等に継承され、ひとつの伝統を築いている。

そのうちの弦楽四重奏曲第3番では、上述のプロ・アルテ弦楽四重奏団のメンバーとの録音が収録されており、コーリッシュ弦楽四重奏団とプロ・アルテ弦楽四重奏団の演奏スタイルの違いを比較できるようになっている。

コーリッシュ弦楽四重奏団での演奏は、活動の本拠だったウィーンの文化の影響があり、プロ・アルテ弦楽四重奏団のものと比べると、幾分もっちりとした演奏のように聴こえるだろう。

プロ・アルテ弦楽四重奏団の演奏は、コーリッシュ四重奏団のものと比べて機能面でスタイリッシュになり、より明晰な演奏ができるようになっている。

ベルクの『抒情組曲』は、そうした機能面での恩恵にあずかり、非常に見通しのよい演奏が実現している。

バルトークの弦楽四重奏曲第5番など、プロ・アルテ弦楽四重奏団の確信に満ちた解釈で、大変聴き栄えがする。

ほとんどのCDは、室内楽奏者としてのコーリッシュに光が当てられているが、シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲やヴァイオリンとピアノのための幻想曲、バルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタなど、独奏者としてのコーリッシュの演奏も多少含まれている。

情感に溺れない理知的なアプローチは、バルトークのヴァイオリン・ソナタに込められた激情を掬い取っていないと言われるかもしれない。

ひたすらクールに弾き込むその演奏は、シェーンベルク譲りの楽曲分析の成果であり、激情に身を任せることを許さない、コーリッシュの強い意志の表れである。

シェーンベルクの協奏曲でも、盟友のルネ・レイボヴィッツのサポートを受け、ひたすら冷静にソロ・パートを弾き抜き、曲のフォルムを鮮明に描き出している。

グンナー・ヨハンセンと共演した幻想曲は、シェーンベルクの音楽をしっかりと咀嚼し、明快に聴き手に伝えようという使命感を感じる。

ヨハンセンはフェルッチョ・ブゾーニ門下のエゴン・ペトリや、フランツ・リスト門下のフレデリック・ラモンド、エトヴィン・フィッシャーらの薫陶を受けたデンマーク出身のピアニスト兼作曲家。

演奏家としてのヨハンセンは、1920年代からアメリカに遠征して、バロック時代の作品から同時代の作品までを広く紹介し、1940年代からは、アメリカの大学を回って、ベートーヴェンやブラームスといった、ドイツの音楽を積極的に演奏していた。

ウィスコンシン大学でもしばしばリサイタルや教授活動を行っていたヨハンセンにとって、コーリッシュは親しい同僚であった。

お互い知り尽くしたもの同士ならではの親密さを持ちながら、演奏解釈に一家言を持つもの同士ならではの丁々発止の仕掛け合いが面白く、シェーンベルクの音楽に生命の息吹をしっかりと吹き込んでいる。

本CD集の最後にシューベルトの八重奏曲を収録しているが、コーリッシュは現代音楽を重視するあまり、過去の作品を軽んじるようなことをしなかったということを示している。

コーリッシュ弦楽四重奏団の時代には、シェーンベルクから、モーツァルトやシューベルトといった、過去の名作もしっかり演奏するようにと助言されていたのである。

過去の作品を演奏するコーリッシュの至芸が申し訳程度にしか収録されていないのは、「コーリッシュを称えて」と銘打つには、いささかアイテム不足な気もする。

しかし、現代音楽の積極的紹介者としての側面を強く打ち出すことによって、コーリッシュの一側面を鮮やかに描き出した点は、高く評価したい。

録音は古いが、新ウィーン楽派やその周辺の音楽の受容を知る上では、貴重かつ重要な資料であろう。

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classicalmusic at 20:02コメント(0)シェーンベルク | ベルク 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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