2019年05月05日

オープンな名演、開放的躍動感、バーンスタインの《新世界より》


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レナード・バーンスタイン(1918-90)を初めて聴いた時ほど衝撃的なものはなかった。

筆者の実家にあるCBSソニーのLPでバーンスタインを聴き始めたのは中学生の頃だったが、クラシックが弾み、跳び、うねっている現実に驚かされた。

それは、折り目正しく、格調高く、品格と威厳をもって鳴り響いてこそのクラシックが、楽しそうにステップを踏み、ラインダンスでも踊るかのように華やかで、開放的な気分を漲らせていた。

フルトヴェングラーのとも違うじゃない、ベームのブラームスとも違うじゃない、カラヤンのベートーヴェンとも違うじゃないと言っても始まらない。

バーンスタインはそんな声には見向きもせず、笑顔で颯爽と走っていたのであり、しかもそれが実に粋で、格好良かったのである。

このアメリカ生まれの指揮者は明らかに時代感覚と美学を武器にクラシックの世界に乗り込み、演奏新時代を切り開いていたのである。

そんなバーンスタインの素晴らしさを理屈抜きに体感させてくれたのがドヴォルザークの《新世界より》だった。

1962年の録音だから、既に名盤はトスカニーニ、ターリヒ、クーベリック、ライナー盤などいくつもあったが、バーンスタインの演奏は最もモダンかつスマートであった。

バーンスタイン44歳の時の録音されたこの演奏は作品をかつてないダイナミックな躍動感と作品をかつてない現代的なアングルから歌い上げた点で値千金の価値と魅力をもっている。

それはアメリカ滞在中のドヴォルザークが書き上げた作品を輝けるアメリカの名指揮者が堂々たる自信と情熱をもって歌い上げたストレートな演奏であり、作品全体にバーンスタイン自身の自画像を写し込んだ演奏となっている。

リズムは小気味よく、前へ前へと前進し、カンタービレは胸を膨らませた憧れに満ち、表現はのびやかこの上なく、音楽が時間の経過とともにますます豊かさを増す、そんな爽快感を与えてくれた。

それはクラシックからアカデミックなイメージと厳めしい門構えを取り払い、「皆さんどうぞ!」とばかりに演奏者が両手を差し伸べて聴き手を招き入れる、過去には存在しなかったオープンな名演であった。

殊にジャズのビートを思わせるようなリズムの処理は絶妙で、バーンスタインはこの演奏を通して、音楽にはジャンルの垣根もない、形態が違っていても喜びの鼓動は底辺でつながっている事実を教えてくれたのである。

自らは成長してもオーケストラをレベルアップさせることはなかったと時に指摘されるバーンスタインではあるが、この時期のニューヨーク・フィルはアメリカ最良のオーケストラであることを納得させる表現の鋭さとダイナミックな鳴りっぷりの良さで抜きん出ている。

殊に立体的なサウンドの見事さは破格で、理屈抜きにオーケストラ音楽の醍醐味を満喫させてくれたし、耳を傾けているだけで勇気づけられる、元気になってくる演奏と言いたくなる感銘を与えられた。

確かに《新世界より》には名盤は数多いが、バーンスタインのこの録音は作品と絆が熱く、演奏が清々しくそして逞しく、今なお初々しい。

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classicalmusic at 13:38コメント(2)ドヴォルザーク | バーンスタイン 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2022年05月23日 07:48
4 今となっては古めかしい録音になってしまったが,レニー節全開,実に開放的でダイナミックな新世界と言えるでしょう。1962年録音と言えば既にシルヴェストリ,フリッチャイ,ケルテス&ウィーンフィル等の名盤が既にステレオ録音されていたので,レニーにとってはタイムリーでは無かったかも知れません。私はカップリングされている<売られた花嫁>の爽快な演奏にさらに惹かれました。
2. Posted by 和田   2022年05月23日 07:54
ご多忙な中コメントをくださりありがとうございます。お伝えしたように拙宅にCBS時代のLPがあり、オーマンディ、バーンスタイン、コステラネッツ、ズッカーマン、アントルモンなどを聴いて育ちました。特にレニーは病み疲れた晩年の彼とは別人のようなヤンキー気質丸出しの爽快な躍動感があって、理屈抜きに魅了されました。元気をもらえるハイドンとしてバーンスタインをご紹介いただきましたが、全く同感です。これが私のできるサザエさん症候群対策です(笑)。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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