2020年01月03日

世界に誇るべき渡邉暁雄&日本フィルのシベリウス交響曲全集


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尊敬すべきシベリウスの交響曲全集であり、これだけ各曲のコンセプトがしっかりとした全集録音は偉大な成果と称賛すべきだろう。

1981年、日本フィル創立25周年企画「シベリウス連続演奏会」直後に行われたセッションであり、渡邉にとっては、全曲ステレオ録音が世界初となった1962年の全集(アメリカでも発売された)に続く2回目である。

渡邉の円熟の芸術をくまなく表した新全集は、旧全集と比べると総じて穏やかさを増し、緩徐楽章での春風駘蕩たる風情、ふと吹き抜ける寂しさは何とも言えない。

晩年「フィンランドの自然は厳しいだけではないのです」と語っていたのを思い出すが、穏やか一方ではないこの指揮者が刻まれた印象的な録音でもある。

フィンランド人の声楽家を母親に持つ渡邉にとって、フィンランドの民謡は子守歌であり、シベリウスは学ぶべき外国音楽ではなく、半ば自分の音楽なのだろう。

ゆえに、日本のオーケストラを指揮しても、どこにも無理のない自然な演奏に仕上がってしまう。

渡邉と長年辛苦をともにした日本フィルは、まことに献身的な演奏でその棒に応えており、聴きながら清々しい気持ちになる。

これらの演奏は非常に説得力が強く、聴き手に深い感銘を与えるが、それは何より渡邉が作品の本質を、深く静かに見つめ、それを論理的な構成力と全人的な共感を持って表現しているからだろう。

もうひとつ嬉しいのが、これが手間暇かけたスタジオ録音であるということである。

最近では、「演奏は生が勝負」ということでライヴ録音が流行しているが、貴重な音源のCD化は別として、最近企画されるライヴ録音の中には、予算や手間を節約したお手軽な企画も多いのではないだろうか。

ライヴの熱狂も良いが、音響最優先のマイクセッティングによる、本格的なセッションも必要だと思う。

そこには、ライヴなら許されるミスやピッチの狂いは許されない、大変な集中力と高度な音楽的実力が問われる場なのである。

聴衆抜きの張り詰めた空間で、作品と向き合うスタジオ録音はもっと見直されるべきだと思う。

全曲ともに、渡邉の人柄の滲み出た心優しい演奏で、特に第4番の透明な叙情性が光っており、大言壮語しない第1番、第2番にも好感が持てる。

もっとも、全般的に、仕上げが丁寧なわりに平板さが目立ってしまうのが残念で、さらに結晶化されたハーモニーや魂の底から湧き上がるリズム感が求められる。

まだまだ上半身の音楽なのだ。

これは日本出身の西洋音楽に携わる指揮者に共通する永遠の課題であろう。

ともあれこれは渡邉暁雄の追悼盤であると同時に、我が国の音楽史の一時期を記録した貴重なディスクとして永く伝えたい。

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classicalmusic at 12:22コメント(0)シベリウス  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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