2019年05月11日

深遠で壮絶、豊かな瞑想性、デルタ・クラシックスにより復刻されたフルトヴェングラー&ウィーン・フィルの《ザ・グレート》1953年ライヴ


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ドイツの巨匠ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)が聴かせる演奏は深い精神性と哲学的瞑想性とでも形容すべき深遠さを誇っている。

それは聴き手をただ単に音楽的感動に浸らせるだけではなく、長い歴史的脈絡の中でその感動を聴き手一人一人が育てていく旅へと誘う、一種、創造的な営みを促す演奏である。

確かに鳴り響く音とともに私たち聴き手は作品を聴き、演奏という再現芸術が誘う熱気と臨場感に陶酔的興奮を覚えるが、フルトヴェングラーの演奏が与える感動は感覚的なレベルをはるかに超えて魂の奥底へと響きわたる力を持ち、それは尊い人生経験にも似た感動領域へと聴き手を誘うのである。

フルトヴェングラーの指揮は基本的にはロマンティックであるが、ただそのロマンの次元と、美しさ、そして発展の形、姿はとても尋常なレベルではなく、聴き手は予想もしない出来事に直面して戸惑いにも似た経験をすることになる。

だがそれは、抗し難い力で聴き手を魅了し、陶酔させるものであり、曲が終わったときの聴き手は、人間が変わってしまったかのような感慨にすら浸るのである。

演奏で奮い立たせるのがトスカニーニ、思索の人にしてしまうのがフルトヴェングラー、どちらも罪作りなほど素晴らしい。

そんなフルトヴェングラーの名演は数知れないが、シューベルトの最後の交響曲《ザ・グレート》で聴かせてくれる演奏の奥深さは格別である。

シューベルトならではの抒情性もなめらかな歌の世界も、もちろん余すところなく描き出されてはいるが、それ以上に聴き手を魅了するのはフルトヴェングラーというロマンティックな詩人が聴き手を旅の随行者にしてしまう事実であり、聴き始めるともう後には戻れなくなってしまう。

ここに聴く演奏は、1953年8月30日ザルツブルク音楽祭に於けるウィーン・フィルとのライヴ録音である。

そのためか表情の劇的変化、興奮のテンションの激しさは壮絶で、1951年のスタジオ録音よりは1942年のライヴ録音の表現に限りなく近いが、むしろ十数年前よりも過激な部分さえあり、時には不自然な感じを与えるほどである。

しかし、オーケストラの響きの密度の濃さ、カロリーの高さは異常なくらいで、現今ではこんなに夢中になって弾くオーケストラ演奏を聴くことは稀である。

しかも巨匠晩年の心境を反映してか、フルトヴェングラーという詩人が秘め持つ瞑想性が豊かな翼を持った広がりを見せており、落とされる影も一段と長く、また美しい。

ただ問題がないわけではない。

フルトヴェングラーの演奏は吸引力が圧倒的であるだけに、視線が釘付けになったままとなり、聴き手の他への興味・関心を奪い取ってしまうからである。

注意しないと病気になってしまう怖い演奏であるが、名演というのは本来はそれぐらいインパクトの強い、強烈な刺激物なのであろう。

とても毎日なんて聴けない、それほど感銘が持続する歴史的名演である。

この実況盤は名演として評されながら、これまで音質の悪いCDしかなかったが、このデルタ・クラシックスによるLP復刻の音質は素晴らしく、解像度が高いので細部まで良く聴き取れる。

管楽器の美しさ、弦を含めた緻密なアンサンブル、豊かな低音、オリジナルの録音技術もドイツでは相当進んでいた事が想像される。

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classicalmusic at 11:13コメント(0)シューベルト | フルトヴェングラー 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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