2019年05月06日

ゆったりとしたテンポで物語のダイナミズムを味わうザンデルリンクのラフマニノフ交響曲第2番


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ラフマニノフの交響曲第2番は大曲で、クルト・ザンデルリンク指揮フィルハーモニア管弦楽団(1990年)盤は67分を超えるが、圧倒的に素晴らしく、掛け値なしに偉大な演奏である。

他盤では60分以内に収まってしまうので、ザンデルリンクは多分にゆっくりと演奏していると思って差し支えないが、その共感と生命力の強さは驚くべきものである。

ラフマニノフは交響曲の理念に実に忠実に作曲していて、それは形式的な問題だけでは決してなく、西欧的弁証法とでも言うべきか、ともかく色々なことが時間に推移のうちに起こって、最後には或る何らかの境地に至るといった「物語」が大枠としてある。

山あり谷ありの大曲を最後までおよそ1時間に亘って演奏してゆくのは大変なことだ。

もちろんこれよりずっと長い作品は数多いが、ラフマニノフのこの曲には、マーラーの狂気や破綻などなく、もっとずっと単純に「物語」としての交響曲を壮大に作曲しているので、かえって演奏するのはしんどいものがあるだろう。

ザンデルリンクの演奏は、以前のもの(30年前のレニングラード・フィル盤)とは比べものにならないほど円熟しており、しかも個性的である。

叙情と劇性が雄大なスケールで濃厚に表出され、第1楽章冒頭から極めて充実した音楽を聴かせているが、各楽章とも完全に曲を手中に収めた表現で、全てが歌に満ち、アゴーギクとルバートの多用も内奥から溢れ出る感興を表している。

長大な第1楽章をザンデルリンクは25分かけて、殆ど苛々させるくらいにゆったりとしたテンポをとることで、逆に物語のダイナミズムを聴き手に味あわせてくれる。

とりわけ弦楽器群のうねり方が凄く、催眠術にかけられたがごとく、ザンデルリンクの大きな指揮棒の動きに合わせて陶酔の波の上を漂っている。

音楽の収縮は堂に入り、旋律線はぐんぐん彼方へ延びていって果てしがなく、これほど雄大かつ恍惚とした音楽は、他盤からは聴けない。

第2楽章もまたゆっくりめのテンポをとっているが、今度はホルンの咆哮するテーマの後ろで刻まれる弦の、速すぎるとただ粗雑にしか響かない弦のリズムをうまく聴かせている。

また、録音のせいもあるのかもしれないが、他盤ではよくわからなかったグロッケンシュピールの響きも明瞭に聴こえる。

第3、4楽章は前の2楽章ほど他盤とのテンポなどに違いはみられず、全体のなかでは第3楽章の前半が幾分醒めているのが不可解だが、後半は幸いなことに復活し、弦楽器だけでなく、オーケストラ全体の気の入り方が尋常ではない。

第4楽章冒頭など、バレエのエンディングを思わせる華麗な響きを聴かせているが、さすがにここに至って叙情的な部分では多少気のダレがみられないこともない。

もっともそれは聴き手の緊張が緩んできたというのもあるのだろうけれど、これだけ長い作品を聴くためには物理的な時間もさることながら、じっくりと物語に付き合うだけの気構えと余裕も必要だ。

ザンデルリンクはあまり録音に熱心な指揮者ではなかったが、このCDは彼の疑いなく最良のセッションだと思うし、こんな演奏が記録されたことに感謝の念を禁じ得ない。

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classicalmusic at 20:42コメント(0)ラフマニノフ | ザンデルリンク 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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