2019年05月09日

画家たちが競って描き上げた夕焼けの情景を音の絵筆で、ブリテン《セレナード》自作自演盤


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夕焼けに魅せられるのは何も日本人だけではない。

荘重なる夕焼けを目前にしたとき、しばし感慨に浸るのは人類共通の心の営みであり、洋の東西を問わず人は郷愁とも瞑想ともつかぬ気分に我を忘れてしまうようである。

イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテン(1913-76)が1943年に作曲した《セレナード》はこの夕焼けに魅せられた詩人の想いを音楽に移し替えた名作と言ってよいだろう。

《セレナード》は、ブリテンの心の友であったテノール、ピーター・ピアーズと、イギリス屈指の名ホルン奏者デニス・ブレインを想定して書かれ、初演もブリテンの指揮で行なわれている。

1963年にブリテンは独唱者はそのままに、ホルン奏者をブレイン亡き後の後継者バリー・タックウェルを迎えて録音しているので、この曲のスタンダードとして聴き続けていって欲しい演奏だ。

《セレナード》は同時に英詩のアンソロジーでもあり、連作歌曲のよきお手本になった作品でもある。

ホルンの巧妙なテクニックが何の気なしに使われているのは名手ブレインへの信頼の証だと思うが、弦楽は各曲に使われた詩の世界を演出する「効果係」のような役割。

エルガーもパート・ソングにしているテニスンの詩をはじめ、ブレイク、コットン、ジョンソン、キーツといった詩人たちの想いが歌われ、《春の交響曲》と並ぶとても英国的な歌曲集である。

作曲者と運命的な絆で結ばれていたとされるピアーズの歌声は、自らの運命と人生を誇るようにも聞こえれば、どこか運命を嘆く哀しい響きにも感じられる。

そこにはブリテンの心の息づかいと同化した親密さがあり、2人の詩人が交わす相聞歌のような姿がある。

ある意味で完全孤独を確認することで、より強い連帯感を意識していく、そんな営みのように聞こえなくもない。

調べはやがて無限の時間と空間とに重なり合い、消えていくのである。

2つとないセレナードがもたらす冷気を吸い取った聴き手もまた、孤独に浸ることとなる。

運命を嘆くかどうかは別だが、神秘的な夜の帳に魅せられる物言わぬ旅人となっていくことは間違いないだろう。

ブリテンの音楽はどこか孤高の匂いがするし、とても洗練されていて、どこか寂しいが、それがまたいい。

カップリングされた《イリュミナシオン》と《夜想曲》はショスタコーヴィチとの関連もあるが、本盤に収められたブリテンの楽曲は幻想を味わう通向きの名曲である。

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classicalmusic at 20:27コメント(0)ブリテン  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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