2019年05月12日

隠れた名盤、職人芸の勝利、ベイヌム&コンセルトヘボウのブラームス交響曲全集


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第1、4番が1958年、第2番が1954年、第3番が1956年に録音されたベイヌム畢生の名演。

ベイヌムは1901年アルンヘム(アーネム)に生まれ、1959年アムステルダムでブラームスの《交響曲第1番》をリハーサル中に亡くなったオランダの名指揮者である。

長らくオランダの名門コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者として活躍してきたが、ステレオ録音が本格化した矢先に、しかも指揮者としてはこれからが円熟期という58歳の若さで急逝した本当に惜しまれる指揮者であった。

コンセルトヘボウ管弦楽団はメンゲルベルク一代で世界屈指の名門オーケストラに育て上げられたが、第2次大戦中のナチスとの関係によりメンゲルベルクは戦後、楽壇から追放されてしまった。

そこで名門オーケストラの再建という重い課題が44歳のベイヌムの肩にのしかかってきたわけだが、彼はただ単にオーケストラを立て直しただけでなく、コンセルトヘボウ管弦楽団を近代的な機能美と柔軟で英雄的な表現力を併せ持つオーケストラへと脱皮させ、新たなる名演の時代を作り出した。

バッハ、ヘンデルからドビュッシー、シベリウス、バルトークさらにはストラヴィンスキー、ブリテンに至る幅広い作品で名演を聴かせたベイヌムだが、オーソドックスなブラームスの交響曲は最も定評が高かったもので、今なお輝きを失ってはいない。

作品を正面からとらえた恰幅豊かな演奏ながら、リズムの切れがよく、フレーズも実に明快に歌われており、鮮度高く、フォーカスもシャープで全く色褪せていない。

骨格がしっかりと据えられた骨のある演奏で、洒落っ気はないが、真の誠実さ、謙虚なる客観性に火がつくとどんなに凄いことが起きるかをまざまざと体験させてくれる。

ベイヌムは目立たない指揮者、とちらかと言えば職人肌の指揮者だったが、第1番終楽章に聴かせるバロック的壮麗さなど、他のどんな名指揮者も実現させ得なかった熱い興奮へと誘う気迫が充満、往時の名声のほどをしのばせる。

定評ある第1、4番はもとより、他の2曲も充実し、最晩年の録音となるが、この時期のベイヌムの演奏には死の淵を垣間見せるようになっており、音楽性の上でさらに奥行きを見せ始めたことを実感させる。

さらに特筆されるべきは1950年代のコンセルトヘボウ管弦楽団の優秀さであろう。

オーケストラが充実、安定感溢れる力強いサウンドの魅力に加えて演奏全体に漲る積極性と躍動感に魅せられる。

響き全体に風格があり、アンサンブルは格調高く、しかも折り目正しく、ソロには威厳があって、オーケストラそれ自体が一つの芸術品であることがよく分かってくる。

またオーケストラ・サウンドに豊かなブレンド感がありながら、各セクションそれぞれに独自の色と香りがあり、それらが混濁することなく見通しのよいアンサンブルを編み上げていくあたりも出色である。

もちろん世界最高の音響特性を誇るコンセルトヘボウでの収録だが、半世紀以上前の録音からもホールの優秀さが感じ取れるというのは、考えてみれば奇跡のような事件であり、なるほどホールも楽器だと再確認させられる。

名演奏家の数だけ名盤が存在するが、不幸にして聴き手が出会える数は限られているので、このセットは大切だ。

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classicalmusic at 08:39コメント(0)ブラームス  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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