2019年10月18日
シュニトケの名曲、クレーメルの熱演、合奏協奏曲第1番
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20世紀後半に登場し、大きな注目を集めた作曲家は数多いが、筆者にとってアルフレド・シュニトケ(1934-98)の衝撃度ほど大きく、理屈を超えた訴求力をもつ音楽は聴かずにはいられない。
1977年に完成された《合奏協奏曲第1番》はシュニトケの作風を象徴する作品で、合奏協奏曲という曲名がまずバロック的だし、事実この作品は「2つのヴァイオリンとハープシコード、ピリペアード・ピアノと弦楽オーケストラのため」に書かれている。
といっても、単なるバロック期の合奏協奏曲のスタイルの模倣やコラージュではなく、合奏協奏曲の精神あるいは方法論を用いて新たに開拓・創造された20世紀の音楽としての主張と個性を持つ作品である。
全6楽章構成で、第2楽章はバロック的装いを見せるが、それも甘美な回想などではなく、現代の聴き手の経験と記憶とを一度振り出しに戻して、歴史の諸相を再体験していくかのような感慨に浸らせるものとなっている。
美しい憩い、対照的な熱狂、ペーソス、孤独といった感情が螺旋的に聴き手を襲い、逃れられなくしてしまう吸引力の強い音楽である。
クレーメルとグリンデンコはこの作品の初演者だが、クレーメルはシュニトケ作品の紹介と普及とを彼の使命としたかのような演奏活動を続けてきた背景を誇っている。
クレーメルには現代の作曲家との交流と、その結果による作品、作曲家の紹介・復活という重要な仕事がある。
しかもそれは演奏家としてのクレーメルの抜群の再創造性や、音楽家としての力量と結びつくことで初めて可能になっている。
クレーメルが今度何を弾くか、あのクレーメルが今こんなものを演奏している、そのことがすなわち世界の音楽シーンの小さな事件となって積み重なっていった。
そこでは再現者=創造者としてのクレーメルの力が恐ろしいまでに発揮され、また、その成果が、やがて私たちの新しい音楽体験のひとつに変わった。
とくにシュニトケの場合、その作品の演奏者・紹介者としてギドン・クレーメルの名を落とすことは絶対にできない。
ここでの演奏も自ら積極的にラビリンスに分け入り、感動の種子を発掘しては聴き手に新しい音楽の未来を指し示そうとしている。
甘えや装飾など不要なものは一切削ぎ落していく演奏を聴いていると、楽器が闘うための武器となったかのような感銘すら与えられる。
シュニトケの登場によって、音楽は音楽であることを一度停止し、新たな意味と価値を深された表現行為に変質したと言いたくなるほどである。
第5楽章で懐かしいロンドが響いてくると、それだけで泣けてしまうから、シュニトケの技は老獪である。
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