2019年05月19日

ブルガリア出身のバス歌手ボリス・クリストフのポートレート、絶品のロシア歌曲


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ブルガリアからは伝統的に多くの名歌手が輩出しているが、とりわけバス歌手には逸材が多い。

ボリス・クリストフの後を継いでニコライ・ギャウロフが出ているし、更にニコラ・ギュゼレフが続いている。

ボリス・クリストフは実際に舞台を観ることができなかった歌手の1人だが、多くの録音を通して彼の歌唱に触れ、感動したことが思い出される。

彼は若い頃からオペラだけでなく、ムソルグスキーを始めとする広いロシア歌曲のレパートリーを持っていて、過去にEMIからリリースされたLP盤のセット物をコレクションとして持っていたが、先般それらの音源がイコン・シリーズのひとつとして11枚のCDにまとめられ廉価盤化された。

活動の時期はモノーラルからステレオの移行期にあたり、20世紀を代表する大歌手の芸術を偲ぶアルバムとして評価したい。

クリストフの声はどちらかと言うとアクの強い、特有のスラヴ臭さがあって、イタリア・オペラに関しては演目によっては適さない役柄もあったが、声楽的なテクニックの面では非常に巧みでしかも芸達者だったために、はまり役では絶大な威力を発揮した。

彼が参加したオペラの全曲盤も数多く出ていて、その中には勿論イタリアやフランス・オペラにおいても優れた演技で魅了した役が少なくないが、バスが主役になるのは圧倒的にロシア物が多く、このセットでもいきおいそうした演目やロシア歌曲が中心となっている。

9枚目以降にその代表的なシーンがピックアップされていて、中でもクリュイタンスの振ったグノーの『ファウスト』やムソルグスキーの『ボリス・ゴドノフ』は圧巻だ。

前者ではメフィストフェレスの鬼気迫るデモーニッシュな声の演技が秀逸だし、後者では名高い『時計の場』で、かつてのシャリアピンを髣髴とさせる狂乱の場から、更に『ボリスの死』に至る迫真の歌唱が聴き所だ。

歌曲についてもやはりロシア物が大半を占めているが、当時としては1人のバス歌手が作曲家ごとにこれだけまとまったセッション録音を残すこと自体稀であり、改めて彼の実力に驚かざるを得ない。

その人気と実力がいかに絶大なものであったか、それはキュイやボロディン、リムスキー=コルサコフ、バラキレフ、グリンカなどの珍しい歌曲を録音していることによってもわかるが、ムソルグスキーの歌曲を演奏しては右に出るものはなく、例えば『蚤の歌』は絶品だ。

ロシア的な情念に纏綿と溺れることなく、それを明晰な形として提出しえた解釈の的確さ、集中力の深さは今日でもまだ模範とするに足る。

それは後にフィッシャー=ディースカウが、ドイツ・リート制覇に乗り出す前哨戦になったと言えるほどだ。

クリストフは生涯を通じて舞台芸術に生命を賭けた歌手なので、曲によってはその歌唱がくどく感じられることもあるが、低い声の持ち主にしては恐ろしく多彩な表現力を縦横に駆使している。

特に映像的な印象を与える『ヴォルガの舟歌』を始めとする黒光りのするようなロシア民謡は一聴に値する。

1949年から67年にかけての録音で音質に多少ばらつきがあるが、いずれもクリストフの声は良好に捉えられている。

ただし廉価盤の宿命でライナー・ノーツに歌詞対訳が付いていないのが残念だ。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:06コメント(0)ムソルグスキー | クリュイタンス 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ