2019年06月25日

R・シュトラウスの交響詩で知られるティル・オイレンシュピーゲルのストラテジーと賤視への抵抗


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この笑話集を読み解くにはある程度の予習が必要であることを断っておかなければならない。

先ずここに集められた話の主人公ティル・オイレンシュピーゲルが中世時代に差別を被っていた賤民だったことに注目すべきだろう。

これについては非常に奥の深い歴史的事情が関わっているので、阿部氏の中世シリーズの著作を読むに越したことはないが、ティルは階級社会から見捨てられた放浪者で市民たりえない下層のランクに位置付けられていた人間だった。

しかし賤視されるに至った職業は元来人間の制御できない世界との仲介となる、例えば死刑執行人、動物の皮剥人や放浪芸人などで、彼らは意外にもキリスト教の徹底した布教によって世の中の片隅に追いやられてしまう。

そしてティルに一杯食わされるのは領主やカトリックの高位聖職者、あるいは富裕な商人達は勿論、庶民にもその鉾先が向けられる。

しかもその手段にはスカトロジックな戦法が容赦なく続出する。

それはティルの権力への価値観を見事に表明していると同時に、権力におもねる者や階級社会に隷属する人々への痛烈な反感を示しているが、また著者は非常に注意深くこのことを『中世賤民の世界』のなかでも言及している。

阿部氏によれば中世の人々は人間によって制御できる小宇宙と制御不可能な大宇宙との係わり合いで生きていた。

そして大宇宙をも制御できると思い上がった者は、それによって翻弄される結果を招く。

ここでティルに振り回される人々は、自分自身自覚していないにせよ、まさにそうした連中なのだ。

中世時代には、人の体に空いている穴は小宇宙たる人間が大宇宙と結び付く場所として捉えられていた。

それゆえ人は口から大宇宙からのものを体に取り込み、肛門から大宇宙に戻すという営みを続ける。

ティルのストラテジーも単に人々に汚物をぶちまけて仕返しをするという意味の他に、それが最後に返るべき大宇宙に返す行為であることにも気付かなければならないだろう。

また言葉の遊びも随所に現れる。

ドイツ語の方言による行き違いや、名詞の意味の取り違いなどでもティルは意気揚々と相手をへこませる。

第60話ではワインをくすねたかどで絞首刑を宣告されたティルがやすやすと解放されるが、ここでもこの時代特有の風俗習慣を理解していないと落ちが分からない。

いずれにせよ注釈がかなり丁寧に付けられているので、短い話でもその都度理解しながら読み進めていくことが望ましい。

この訳出ではティルの誕生からその死に至るまでのエピソードが阿部氏によってクロノロジカルに整理され、話の進行が分かり易くその前後関係も明らかにされている。

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classicalmusic at 12:40コメント(0)芸術に寄す | 筆者のこと 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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