2019年09月29日

ヤナーチェクのオペラに示す深い造詣、素朴な味わいながら本質を的確に照射するグレゴルの《利口な女狐の物語》


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ヤナーチェクの7番目のオペラ《利口な女狐の物語》は、疑いもなく、ヤナーチェクの最高傑作のひとつだ。

筆者はこの作品を舞台で鑑賞したことがあるが、ぬいぐるみがたくさん出てきたりもして、子供は子供なりに楽しめ、大人は大人でヤナーチェクの哲学にふれて、より深い二重の楽しみ方ができるという作品である。

その哲学とは、作曲当時60代半ばを過ぎていた彼が、老いと死への恐怖を仏教輪廻と呼んでいる自然界の果てしない生命交替の定めを受け入れることによって克服した、晩年の悟りの境地でもある。

それはこの作曲家が自分を取り巻く森羅万象のすべてに創造の源を求め続けたことを物語っている。

そこでは、メルヒェン的な題材が用いられながらも、そのメルヒェンは現実から遊離したものではなく、むしろ、現実を鋭く問い詰めようとするものである。

それでいて、その現実とは、私たちが慣れ親しんでいる現実と一見すれば同じような外観を保ちながらも、実際にはすべてがラジカルに逆転されてしまっているような現実であるというような、何とも独創的な二重構造が出来上がっている。

物事の本質を見極める作曲家ヤナーチェクの眼力の凄さの証明と言えるだろう。

そんなヤナーチェクの傑作中の傑作である《利口な女狐の物語》は、これまでにもいくつもの名盤が出ているけれど、それらの中でもとくに素朴な味わいをもち、しかも本質を的確に照射していると思わせるのが、このグレゴル盤(スプラフォン・レーベル)である。

ヤナーチェクの権威、マッケラスの指揮は入念緻密で作品に深く踏み込み、自然界の律の厳しさへの恐れとそれを克服した後の悟り、春の訪れとともによみがえる自然への讃歌などが重なり合う作品の本質に迫っていた。

それに対し、プラハ生まれの指揮者グレゴルによる音楽づくりは、ヤナーチェクの音楽のなかの豊かな郷土色を巧みに掬いあげながらも、それだけで終わってしまっておらず、本質的な部分への深い踏み込みを示しており、興味深い。

人間、狐、あなぐま、蚊、おんどりなどなどが共通の言葉をしゃべり、同一の地平線上で生き、輪廻転生のようなものを繰り返すなどという音楽は、よほど深い部分での共感、愛情のようなものがなければ、強い説得力、魅力などはもちにくい。

このグレゴル盤には、それらが十全なかたちで備わっていて、指揮者、オーケストラ、それに歌手陣、いずれも申し分がない。

声楽陣の扱いも含めて、この指揮者がヤナーチェクのオペラに造詣が深いことを物語ってる出来ばえだ。

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classicalmusic at 12:16コメント(0)ヤナーチェク  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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