2019年06月01日
しなやかな歌心、アンドレ・ワッツ、コロムビア・アルバム・コレクションの12枚
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アンドレ・ワッツの1963年から80年までのコロムビア音源を12枚にまとめたセットで、この時期の彼の録音を網羅した全集ではないが、それぞれがオリジナル・デザイン・ジャケットに収納され、ジェド・ディストラーのエッセイと収録曲目及び12葉のスナップ写真を掲載した47ページのライナー・ノーツが付いている。
ワッツはドイツ生まれだが、その音楽的な傾向からするとジョルジュ・シフラのアメリカ版といった演奏スタイルを身につけていた。
若い頃から強靭な指とパワフルな表現力にものを言わせて、アクロバティックな名人芸を披露した。
それはCD1の第1曲目を飾るワッツ16歳でのデビュー時のバーンスタイン、ニューヨーク・フィルとのリストのピアノ協奏曲第1番に象徴されている。
ワッツのテクニックの見事さとバーンスタインのダイナミックな棒との相性のよさをよくうかがわせる演奏であろう。
1963年のデビュー当時の演奏であり、彼の若々しい気迫を伝えるとともに彼のピアニズムのいわば原点を示すディスクと言えよう。
ワッツのそれぞれの作品への解釈はいずれも覇気と確信に満ちていて、全く曖昧さを残さないくっきりとした輪郭を描いているのが特徴だ。
近年レコーディングこそ減ってしまったが、現在まで精力的な演奏活動を続けることができたのは、彼が名声に驕ることなく続けた努力と研鑽の賜物に違いない。
一方ワッツの弱点を敢えて言うならば、収録曲目を一瞥すれば明らかだが彼のレパートリーはかなり限定されていて、古典派からロマン派にかけてのオーソドックスな名技主義的作品が中心になる。
例えばこのセットにはバッハやモーツァルトは1曲も入っていないしフランス、ロシア物や現代音楽はごく限られていて、とりわけリストを中心とするヴィルトゥオーソ系で最も才能を発揮したピアニストだと思う。
その意味で彼の第一級の職人技や演奏会場を沸かせるエンターテイナーとしてのずば抜けた能力は評価されるべきだ。
しかし音楽の持って行きかたが時としてやや強引なところがあり、ショパンやシューベルトなどでは覇気が裏目に出て大味な印象を与えてしまうのも事実だろう。
尚最後の1枚は1980年に東京文化会館及び厚生年金ホールで行われたコンサートからのライヴ録音で拍手が入っている。
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