2019年05月25日
アルファ・クラシックスが誇る高音質で聴くテレマンの笛とシャリュモーのための音楽
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このアルバムを鑑賞して先ず印象に残るのは音質に優れている点で、教会内の潤沢な残響を含んだ広い音場の中にそれぞれの楽器の定位、楽器同士の独立性やバランス、そして奥行きまでが手に取るように感知できる。
あたかも奏者達が目の前で演奏しているような生々しい臨場感が得られているが、あくまでも自然なサウンドが保たれているのが特徴だ。
またピリオド・アンサンブルでは古楽器特有の繊細で個性的な音色を明瞭に捉えることが課題になるが、レギュラー・フォーマットのCDでもこれだけの音質の再生が可能であることを示したアルファ・クラシックスの録音技術に拘った企画が注目される。
このCDにはジョヴァンニ・アントニーニのリコーダー・ソロによるオットテールの短いプレリュードからアタッカで導かれるテレマンの組曲イ短調を中心にクラリネットの先祖シャリュモーのためのソナタなど5曲が収録されている。
笛のためのバロック組曲と言えば、当時のフランスやドイツの宮廷でもてはやされたトラヴェルソをソロに取り入れた、バッハの管弦楽組曲第2番ロ短調が良く知られたところだが、テレマンの組曲イ短調はその調性と音域から通常リコーダーで演奏されている。
ジェド・ヴェンツがムジカ・アド・レーヌムとトラヴェルソで演奏したのはむしろ稀なサンプルだろう。
アントニーニのリコーダーはテレマンの音楽の本質的な要素、つまり演奏することとそれを聴くことの楽しみを理屈抜きで堪能させてくれる。
屈託のない娯楽性と言ってしまえばそれまでだが、そのためには作曲家の楽器の特性を熟知して最大限に活かすアイデアと創意工夫がある。
演奏者にはそれを実現する巧みな表現力とテクニックが要求されるので、作品の品位を保ちながらも良い意味でのパフォーマンスが欠かせない。
こうした曲集を聴いていると、当時テレマンが作曲家として大バッハよりも庶民的な高い人気を誇っていたことも想像に難くない。
アンサンブルはイル・ジャルディーノ・アルモニコのメンバー7人で、このうち通奏低音にはヴィオローネのほかにチェンバロと大型のリュート、テオルボが加わって彼らの手馴れた即興演奏もテレマンの音楽をより活性化している。
尚メンバー全員の使用楽器はライナー・ノーツに明記されている。ピッチは現代よりほぼ半音ほど低いa'=415Hzのいわゆるスタンダード・バロック・ピッチ。
アントニーニとイル・ジャルディーノ・アルモニコは2014年からハイドンの交響曲全集の制作を企画して目下のところ既に同アルファ・クラシックスから続々リリースされ、録音作業は順調にはかどっているように見える。
完成はハイドン生誕300周年に当たる2032年だが、このCDはその大事業が開始される直前に録音されている。
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