2019年12月20日

ロッシーニ最後の名作、全曲演奏のスタンダード、ムーティ&スカラ座1988年ライヴ


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ムーティは1972年に歌劇《ウィリアム・テル》の世界初全曲演奏を成し遂げた立役者であり、共感度も適性も一番高いものがあるだろう。

これは1988年の冬のシーズンのスカラ座のオープニングとしての上演のライヴ録音である。

各歌手の聴かせどころ観客の拍手、反応が全て収録されていて熱気がストレートに伝わってくる。

音楽の中身とはあまり関係ないけれど、最後の幕が降りたところの観客の拍手、熱狂の仕方がまた凄い(さすがイタリア人!)。

ここには、ムーティという指揮者がライヴをするときの、当然そこに期待される魅力が全て備わっている。

歌手ではまず、メリットのアルノルドと、スデューダーのマティルデがよく、非常に清新で若々しい情熱を表現して、魅力を引き出している。

このオペラは、よく知られているテルの活劇に、スイスの若者アルノルドとオーストリアの王女マティルデとの敵同士の恋がからんだ形になっている。

ムーティの演奏では、テル役のザンカナーロに主役としての存在感が今一つないため、むしろ若者たちの恋が主要な筋のように思えてしまうのであるが、このことはむしろ長所であって、短所では決してない。

彼らの禁じられた恋ゆえにスイスの村人の反乱はもっと緊迫感を増すのだし、彼らの若々しさはムーティのつくる音楽にぴったり合っている。

そもそもこの演奏の一番の魅力はやはり、ムーティのがっしりとした音楽把握にあると言っていいだろう。

彼はここで、ロッシーニの18世紀的・イタリア的要素も全面に打ち出して、タイトで引き締まった、そして劇的かつ躍動的な音楽をつくることに成功している。

有名な序曲から第1幕冒頭の合唱への流れを聴くと、19世紀的重厚さのほうへ向かっていることが解るだろう。

しかしこのことが、ムーティの演奏をむしろ現代的で新鮮な、シャープなものにしているのだ。

序曲の終結部の、ムーティの畳み掛けるような迫力には、ポピュラー名曲の範疇をはるかに越えた、尋常ならざるものがある。

そして全曲にわたってムーティの演奏は、テンポの変化にも冴えを見せ、またすでにここでオペラの主役となりつつある合唱やオーケストラに、室内楽的な精度と強力なアンサンブルを与え、絶えず生き生きとした新鮮な表現を獲得させている。

これはアバドによる同じロッシーニ演奏などとともに、長く現代的なオペラ演奏の規範となるだろう。

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classicalmusic at 12:10コメント(0)ロッシーニ | ムーティ 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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