2019年09月05日
ブロムシュテットがアメリカのオーケストラで描く『アルプス』
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ブロムシュテットとサンフランシスコ交響楽団の録音は、取り立てて際立った個性があるわけではないが、中庸を得たすべてにバランスの良い秀演と言え、サウンド志向の人も満足させる実に豊麗な音質が特筆ものだ。
彼の演奏は地味ながら強固な力感と、必要にして十分な緊張感をもって作品の本質に迫る。
『アルプス交響曲』は膨大な編成によるオーケストレーションを見事に整理した上で、ふくよかさと明晰な響きを両立させディテールを入念に表出している。
例えば「日の出」で聴くことのできるコントラバスの厚い響き、この部分はコントラバスの持続音がまさにバス(基礎)として良く働いているために充実した重厚な響きを構築することに成功している。
アメリカのオーケストラがR・シュトラウスを演奏するとしばしば無機的で安っぽい響きになってしまうことがある。
しかし、ブロムシュテットは、バス声部を大切にすることによってサンフランシスコ響からヨーロッパのオーケストラのような響きを引き出し、安定した表現を獲得している。
また、全体が奇を衒うことのない落ち着いた音楽運びになっているのも素晴らしい。
無理して描写に拘らずR・シュトラウスの錯綜としたスコアを自然に再現することに重点を置いた表現は、ともすると単なるパノラマ描写の羅列に終わってしまうアルプス交響曲の真の魅力を明らかにしていると言える。
そのため「滝」におけるきらめくような水飛沫や「雷雨と嵐」での迫力ある音描写などはむしろ効果的になっている。
ただし、「頂上にて」のソロ・オーボエのニュアンスの不足や「日没」での迫力不足著しいヴァイオリン群などは全体を聴き終わった後の征服感を弱める結果を招いている。
特に「日没」ではヴァイオリンとハープ・パートのみがffで、他のパートはすべてf一つの指示になっている部分では渾身の力を込めたヴァイオリン群の張り詰めた響きがなければアルプスの山々に赤く夕日が映える荘厳な日没は描けない。
この部分の物足りなさは残念極まりない。
ヴァイオリン群は、この部分だけではなく全体に薄っぺらい音になるのが目立ち、この演奏の最大の欠点かもしれない。
なお、カップリングされている『ドン・ファン』も同じように優れた演奏で、作品の伸びやかさと音の繊細な効果をよく表現しており、劇的な力感も強い。
ただし、こちらはややアンサンブルに粗雑な面が見られるなど必ずしも万全でない部分が多い。
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