2019年06月13日
簡素なスタイルのなかに古典的造形感が示されるダムのR・シュトラウス:ホルン協奏曲集
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ペーター・ダムとケンペ/シュターツカペレ・ドレスデンによるディスクは、録音が1975年とやや古い。
しかし、シュターツカペレ・ドレスデンがR・シュトラウス縁のオーケストラであることやオーボエ協奏曲がカップリングされている利点もあり取り上げた。
ホルン協奏曲第1番は、1883年の作曲なのでシュトラウス19歳の作品ということになる。
まだ後年の豊麗なオーケストレーションは見られない代わりに、まるでマンハイム楽派やモーツァルトの20番代の交響曲を思わせるような古典的で簡潔なスタイルを持っているのがかえって新鮮に聴こえる。
ダムのソロは、温かく抑制されたニュアンスで、その古典派を思わせるスタイルを見事に捉えている。
このことはバックのケンペ/シュターツカペレ・ドレスデンの縦の線をしっかりと整えていく表現にも当てはまる。
また、例えば、第1楽章の終わりなどでも必要以上に大袈裟にならず節度ある高揚でダムをよく盛り立てているなど全体にまとまりの良い端正な演奏と言え、好感が持てる。
その一方で、第2楽章の後半などでは、後のシュトラウスを予告するロマンティックで濃厚な表現もあり飽きさせない。
さらに、全曲を有機的に統一する付点リズム音型と三連符の扱いにも一貫性があり説得力がある。
第2番の協奏曲は、第1番から実に60年を経た1943年に作曲されている。
それにも拘わらず、古典派を思わせる簡潔なスタイルを持っているという点で共通する面が多い。
しかし、そこには、1人の偉大な作曲家の晩年の崇高な境地が表出されている作品でもある。
当然、演奏にもその点が如何に表現されているかがポイントとなる。
第1楽章の終わりで音楽がトランクィロになる瞬間に鮮やかに気高い表情になり、第2楽章へかけてどこまでも静寂な抒情が広がり行く部分の表現にそれが感じられる。
また、全体に室内楽的なアプローチに徹しているのも良く、特にオーケストラ・パートの木管、F管ホルンとEs管のソロ・ホルンの掛け合いやユニゾンは素晴らしい。
この点でダム盤の第2番の演奏は、第1番のシンフォニックな作りとの違いを際立たせている優れた解釈を示している。
総じて、ソロだけではなくケンペ/シュターツカペレ・ドレスデンのバックにも伝統に根ざした良い意味の職人気質が感じられ、古典的で端正なスタイルを持った温かく魅力あるR・シュトラウスになっており、独自の魅力を持っている。
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