2019年12月26日

ハスキルの音色の多様さ、タッチの微妙さ、テンポの絶妙さ、スカルラッティの11曲のソナタ集


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嬰ハ短調L256が始まると、筆者は無限の暗黒のなかにひとり置かれたような感じに襲われる。

何という孤独感、そして高貴な精神!

ハスキルの音色の多様さ、タッチの微妙さ、テンポの微かな揺れぐあいはまさに絶妙で、もうこの1曲目だけで、この盤はとてつもない名演なのだということが直感できるのである。

次のト長調L388は駆け抜けるようなアレグロだが、注意深く聴くと、テンポがほとんどフレーズごとに変化しているのに気がつく。

普通このようにテンポを揺らされると、恣意的で落ち着かない印象を受けると思うのだが、ハスキルの場合曲想とぴったり一致して何の違和感もなく、感情の綾のひとつひとつが見えるようである。

3曲目のハ長調L457は、長調で書かれているにもかかわらず、何とも吹っ切れない感情がたまらなくいとおしいアンダンテである。

後半は短調でそっと始まるが、さまざまな寂しい感情の明滅の果てに、慰撫するような長調のアラベスク音型で曲は閉じられる。

ただそこに媚びは一切なく、聴き手は畏敬の念をもってその孤独感を味わうのである。

……とこのように11曲について全部書こうとすれば、きりがないくらいに素晴らしい演奏である。

筆者はこの盤でスカルラッティの美しさを知って、もっとたくさんの素敵な曲に接したいという想いでスコット・ロスの全集にたどり着いたわけだ。

スカルラッティのソナタ集で定評のある盤と言えば、ホロヴィッツ盤(ソニークラシカル)があり、以前はよく聴いていたのだが、あまり面白くないと感じるようになった。

重なっている曲はイ長調L483のみであり、ホロヴィッツ盤の選曲が悪いのかとも考えたのだが、やはり曲の問題ではなく、曲を通じて表出される幻想性、さらには弾き手の精神性の格差が表れているのだと思う。

ハスキルのスカルラッティを聴いていて、「こんな風にシューベルトのソナタ第21番変ロ長調を弾いたら空前絶後の名演になるのかな」とふと思い、聴き進めたところ、残念ながらスカルラッティほどのファンタジーはなかった。

やはりこのスカルラッティこそが、ハスキルのベストレコードなのかもしれないと感じた次第である。

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classicalmusic at 12:33コメント(0)ハスキル | スカルラッティ 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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