2021年10月05日

晩年のベーム、気の置けない仲間とのモーツァルト協奏曲及びセレナーデ集


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ベームは晩年にウィーン・フィルの気の置けないメンバーとモーツァルトの管楽器のための協奏曲や室内楽を集中的に録音した。

この7枚組のセットには編曲物のフルート協奏曲第2番ニ長調を除いた管楽器が加わる総ての協奏曲と室内楽のための代表的なセレナーデ及びディヴェルティメントが収められている。

尚このうちセレナーデ第6番『セレナータ・ノットゥルナ』、同第7番『ハフナー』、同第9番『ポストホルン』と同第10番『グラン・パルティータ』の4曲に関してはベルリン・フィルとの協演になる。

協奏曲の独奏者はそれぞれがウィーン・フィルの首席奏者を務めたメンバーばかりで、総てオーケストラの団員でカバーしてしまうところにウィーン・フィルの実力が窺われる。

元来ベームはモーツァルトを得意としていたが、また彼らに対する注文の煩さ、細部への要求の頑固さなどでも良く知られていた。

全曲を通じて中庸の美を頑固なまでにわきまえ、整然とした秩序の中に表現された演奏集で、遊びを許さないベームの生真面目な性格が良く表れている。

しかし彼らには強い仲間意識があって、とりわけ指揮者、ソリスト、オーケストラが家庭的な和やかさ、親密さで演奏を楽しんでいる雰囲気さえ伝わってくるのも特徴的だ。

ここに収められた協奏曲集の中でもフルートのヴェルナー・トリップ、オーボエのゲルハルト・トゥレチェク、クラリネットのアルフレート・プリンツ、ファゴットのディトマー・ツェーマン、そしてホルンのギュンター・ヘーグナーが、各自会心の出来と言うべき自由闊達でしかもウィーン流にこだわった見事な演奏を披露している。

特に4曲のホルン協奏曲はヘーグナーがソロにウィンナー・ホルンを使用した数少ない録音になる。

音が割れやすい上に音色が渋く、奏法が難しいウィンナー・ホルンは、しかし彼のような名人の手にかかると如何にもモーツァルトに相応しい情緒と趣を醸し出してくれる。

特有のくすんだ音色の魅力もさることながら、控えめながら上品で巧みな表現が秀逸だ。

セレナーデでは、第13番『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』1曲目のト長調のように、ごくポピュラーなレパートリーにおいてもウィーン・フィルの自然発生的な歌心の流出はやや抑えられて、洗練された音楽性と古典派特有の形式美の表出のほうが勝っている。

こうした解釈が聴き古された名曲にかえって新鮮な印象を与えているのは指揮者の力量の示すところだろう。

一方『ポストホルン』ではモーツァルトの多彩でシンフォニックなオーケストレーションを遺憾なく再現した精緻で、しかも力強い指揮ぶりが冴えている。

また当時のベルリン・フィルのスター・プレイヤー達、ジェイムズ・ゴールウェイやローター・コッホのソロの美しさと巧妙なアンサンブルが花を添えた魅力に溢れる演奏だ。

尚メヌエットで活躍するポストホルンのソロはホルスト・アイヒラーが担当している。

1970年から79年にかけての録音で、音質は極めて良好。尚この7枚組のボックス・セットはSHM−CD仕様の日本盤でも再リリースされている。

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classicalmusic at 09:04コメント(0)モーツァルト | ベーム 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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