2019年06月27日
音によるドラマ、多彩な表現力、リヒテルの面目躍如たるベートーヴェン変奏曲集
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ベートーヴェンの『変奏曲ヘ長調』Op.34、同ニ長調Op.76及び『プロメテウスの創造物による15の変奏曲とフーガ変ホ長調』Op.35は1970年にザルツブルクでオイロディスクに録音したセッションになる。
カップリングされたシューマンの『ノヴェレッテ』第2番ニ長調、第4番ニ長調、そして第8番嬰へ短調の3曲は79年に東京厚生年金会館ホールでのライヴになる。
いずれもリマスタリングされた音質はきわめて良好で、リヒテルの多彩な表現力が縦横に駆使された優れたアルバムになっている。
またピアノの音色の美しさとその対比も周到に考えられていて、彼の音に対する鋭い感性が窺える。
ベートーヴェンの『変奏曲ニ長調』では自作の劇付随音楽『アテネの廃墟』からの「トルコ行進曲」がそのままテーマとして使われているが、ヘ長調の方では流麗に仕上げ、この曲では鮮やかな対照を際立てるリヒテルのテクニックは流石だ。
彼はこの曲を気に入っていたらしくコンサートでしばしば取り上げたが、普段それほど演奏される機会に恵まれていないので貴重なサンプルでもある。
一方フーガのついた大作変ホ長調のテーマは後に交響曲第3番『エロイカ』の終楽章にも再利用されているだけに、リヒテルも当然そのピアニスティックな効果を意識したスケールの大きな表現が聴き所だ。
各変奏の鮮やかな性格対比があるうえに、作品全体を通してベートーヴェンが意図した統一と集中が達成されていて、この2つが相乗効果を発揮して、緊迫した音楽的瞬間を生み出している。
まさにベートーヴェン弾きとしてのリヒテルの面目躍如たる名演で、この演奏は“音によるドラマ”にほかならず、ここまで変奏曲を深めてくれるピアニストは珍しい。
ライナー・ノーツは見開きの3ページのみで典型的な廉価盤仕様だが、演奏の内容は非常に価値の高いものだ。
音源は英オリンピアからのライセンス・リイシューになり、ミュージック・コンセプツ社では特に音質の優れているものを選んでアルト・レーベルから供給しているようだ。
尚前半3曲のベートーヴェンに関してはザルツブルクと書かれている以外は録音場所が明記されていない。
ホールを限定することはできないが、その潤沢な残響とピアノの音色からして、彼が好んで訪れたクレスハイム城内で行われたことが想像される。
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