2020年12月01日
ポリーニの現代音楽への研ぎ澄まされたアプローチ
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鮮烈な超絶的技巧の爽快さと、緻密な洞察力による作品解釈の非凡さにおいて時代を超えて圧倒的な支持を得ている若き日のポリーニの20世紀作品の代表的名盤。
このディスクには、初出のLPでまるまる2枚分が収録されており、ストラヴィンスキーとプロコフィエフがグラモフォンの専属となって初めて録音したアルバムにあたる。
ショパンの『エチュード集』とともに発表され、日本の音楽ファンにポリーニの名前を強烈に印象付けた名盤である。
20世紀ロシアのピアノ音楽の最高峰に位置する2つの作品をいかに演奏すべきかということについて、ポリーニはここでひとつの最終的回答を示した。
最初に置かれたストラヴィンスキーの『ペトルーシュカ』からの3楽章で、その研ぎ澄まされた感性の迸りと恐ろしいほどの完璧なメカニズムで、ポリーニが圧倒的な演奏を披露した。
冒頭から力強く明晰な打鍵によって、きわめて完成度の高いピアノ作品として『ペトルーシュカ』を描き切る。
そこにはバレエ音楽の気楽さはないが、作品が持つ物語性は交響詩のように抽象化され保たれている。
最後の部分の畳み掛けていくところなど、現代のピアニズムの究極の姿と言えるだろう。
プロコフィエフも作品の持つ冷酷で非情な世界を克明に表現した圧倒的演奏で、ポリーニによって、作品の全貌が初めて明らかにされたと言っても過言ではない。
それから5年後に収録されたヴェーベルンとブーレーズも素晴らしいの一語に尽きる。
ピアニストのみならず音楽を職業とする者にとって、その時代に生み出された楽曲を認識することは避けて通れない道だ。
その点ポリーニは早くから現代音楽にも熱心に取り組み、積極的に自分のレパートリーに加えた。
更に彼は現代作品を得意とし、演奏会でも積極的に取り上げてきたが、そうした現代ものの解釈者としての最良の姿がここに示されている。
特にこのCDに含まれるヴェーべルンのヴァリエーションやブーレーズのソナタのように難解な理論の音楽として敬遠されがちな作品を、ピアニスティックな魅力ある小品に昇華する高度な音楽性と、鍵盤上の表現における切れ味の良さは彼ならではのものだ。
それはあたかもプリズムを通した太陽光線が鮮やかに色彩化するのをまのあたりに体験するようで、予備知識を持たない私達にも新鮮な驚きと感動を与えてくれる。
精妙極まりない響きによって表現し尽くされた緻密な世界は、音楽のひとつの究極の姿を示すものと言えよう。
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