2021年11月24日

絶妙なバランス、シェリングとへブラーのモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集


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40曲を超えるモーツァルトのヴァイオリンとピアノの為のデュエットの中から、マンハイム・パリ時代以降の作品を中心に18曲が選ばれていて、この天才の溢れんばかりの音楽的な閃きと創意に満ちた、まさに音楽の泉を体験させてくれる。

1970年代のシェリングはしばしば精彩を欠いた、四角四面の面白みの無い演奏者として批判されるが、このモーツァルトには当てはまらない。

実際この作品集の録音は彼が50代の円熟期、1969年から72年にかけて行われたが、全く時代的な趣味を感じさせないばかりか、常に新鮮な感動をもたらしてくれる。

それはまたピアニストにイングリット・ヘブラーというモーツァルトのスペシャリストが協演していることも幸いしている。

彼らの演奏の最大の特徴は、両者の間での音楽的に絶妙なバランスだ。

古典的均衡という意味では、まさに模範的なデュエットで、1曲1曲にモーツァルトが織り込んだ湧き出るような豊かな創造性を、この上なく上品な趣味で聴かせる2人のテクニックは流石だ。

しかも彼らの解釈には全く恣意的なところが無いのも好感が持てる。

シェリングのヴァイオリンからは、彼の個性よりもまず先に演奏する作曲家の作品へのアプローチが聞こえてくる。

そのことから彼の演奏は没個性的でつまらないという批判が出てくるのは残念なことだ。

何故ならそこには時代を超越した普遍的な解釈があるからだ。

彼は極めて丁寧に楽譜を読み取り、感情に流されること無くそれをできる限り忠実に再現しようと努める。

またイングリット・ヘブラーの肌理の細かいダイナミクスと零れ落ちるようなまろやかなピアノの音色がこの曲集を一層魅力的なものにしている。

モーツァルトの音楽の演奏上での難しさは、曲中に音楽の基本の総てが集約されているだけに、演奏家自身の音楽性が否応なしに問われることにある。

逆に言えばモーツァルトを弾かせればその演奏家の長所も欠点も見事に露見してしまう一種の試金石なのだ。

ヴァイオリンのパートはごく平易で単純に書かれているが、シェリングとヘブラーの演奏は薫り高い芸術性に満たされている。

彼らには個性的な癖やあくの強さが無く、常に明快ですっきりとした古典的な解釈が特徴で、その中に見せる上品で繊細なロココ趣味はこの二人の協演ならではのものだ。

一口に言って正攻法で精緻なアンサンブルだが、彼らの溢れるほどの音楽性が随所に滲み出ていて、まさに音楽の心を感じさせる演奏だ。

またこの時代に流行したヴァイオリンのオブリガート付ピアノ・ソナタが、曲を追って次第にソロ楽器が主導権を握り、逆にピアノが伴奏にまわるソロ・ソナタに発展していく過程も興味深い。

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classicalmusic at 10:23コメント(0)シェリング | ヘブラー 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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