2019年07月19日
コスモポリタン的なプログラミング、イタリアSQのルガーノ音楽祭ライヴ(1968年)
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1968年に催されたスイス・ルガーノ音楽祭からのライヴで、当日はモーツァルトの弦楽四重奏曲第15番ニ短調KV.421、ドヴォルザークの同第12番ヘ長調Op.96『アメリカ』、それにラヴェルの同ヘ長調で締めくくっている。
このコスモポリタン的なプログラミングが彼らの演奏の特質を良く表している。
イタリア弦楽四重奏団はモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス及びヴェーベルンの弦楽四重奏曲全曲をレパートリーにしていたので、全員イタリア人でありながらドイツ系の曲目に関してはスペシャリストだった。
中でもモーツァルトは彼らの明るい響きとカンタービレの魅力を縦横に発揮した演奏が聴き所だし、またこの曲では終楽章のドラマティックな表現も堂に入っている。
一方ドヴォルザークではテンポをかなり自由自在に変化させながら、メリハリを効かせた軽快なアプローチが彼らのオリジナリティーで、中でも終楽章の一気呵成に盛り上げるコーダは爽快だ。
確かにドヴォルザークらしいかといえば、決してそうではない。
第2楽章のレントもひたすら明朗快活に歌っていて、この曲の持つ特有の湿度や寂寥感などはさっぱり感じられないが、そうしたローカル色を抜きにすればこれはこれで充分美しい演奏だ。
ラヴェルでは彼らの明晰な解釈がメリットになって、整然として調和のとれたアンサンブルが、まさに練達の技と言うに相応しい。
第2楽章のピチカートや終楽章はいかにもラヴェルらしい色彩を感じさせる。
ちなみにイタリア弦楽四重奏団はスメタナ弦楽四重奏団と同様に、総てのレパートリーを暗譜で演奏したが、更に楽章間での調律を一切避けていた。
そのために曲によってはインターバルが非常に短く、緊張感を保ったまま即座に次の楽章に進むことも可能にしていた。
また彼らは旋律を歌わせるためにはテンポを動かすことも意に介さないし、時にはオーケストラを髣髴とさせる豪快なダイナミクスの変化も得意とした。
曲の仕上げ方が一見単純明快のようでいて、常にそうした意外性や驚きを体験させてくれる。
全体的な評価を少し控えめにしたのは音源のためで、おそらくマスター・テープの保存状態の悪さが原因と思われる、小さな音跳びや揺れが数箇所に聞かれる。
ステレオ録音で音質自体も決して悪くないので残念だ。
尚拍手の部分はカットされている。
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