2019年05月31日
バジェット価格で復活、高い音楽性とウィットに溢れるアルバン・ベルクのハイドン
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2008年に解散したアルバン・ベルク四重奏団の演奏活動が円熟期を迎えていた時期の、ハイドン作品集をまとめた3枚で、颯爽とした美しい響きの中に精緻で緊密なアンサンブルが冴え渡っている。
アルバン・ベルク四重奏団のこれらの曲に対する解釈は緻密で理性的だが、それでいて決して深刻にならないクールな表現と適度な快活さを併せ持っている。
彼ららしいモダンなアプローチだが、それぞれの急速楽章では爽快でアグレッシブなアタックも聞かれ、ハイドンの音楽語法の輪郭を鮮やかに示した演奏と言えるだろう。
20世紀の音楽を得意としたアルバン・ベルク四重奏団だが、彼らは活動当初からハイドンやモーツァルトも演奏しており、例えばハイドンの《騎士》と《皇帝》は、ベルクの《抒情組曲》と同じ年、1973年に早くも録音していた。
つまり、弦楽四重奏曲の本源に対する思いは、深くて熱かったのである。
彼らのハイドンは、以前のウィーンの弦楽四重奏団に比べると、はるかに強靭になっていた。
ひ弱さは全く感じられず、現代的というのか、きびきびしている上、技術的にも隙がなかった。
またウィーンの音楽家らしく作曲家の古典的な価値をウィットに溢れる独自のオリジナリティーで再現しているのも聴きどころだ。
結成から20年の年輪から、表情は一層深く、より熟し、表現はさらに厚みを加えたと言えるだろう。
特にCD1−2の『エルデーディ四重奏曲』全6曲は現在入手困難になっていた演奏なので、バジェット価格でのリイシュー盤を歓迎したい。
尚このセットでのヴィオラ・パートは総てトマス・カクシュカの演奏になる。
ハイドンは当時娯楽目的が支配的だった複数の弦楽器を組み合わせたジャンルの音楽を、よりシンプルかつ堅固な4つの楽器編成に定着させた。
その可能性や高度な音楽性の追究によって殆んど小宇宙的な音楽形態の次元にまでその価値を高め、彼に続いたモーツァルトやベートーヴェンの創作活動に道を拓いた貢献者だ。
これらの曲集でも円熟期のハイドンならではの職人技とも言うべき手馴れた楽器法と、対位法による巧みな曲想の処理や随所で天才的な閃きをみせる機知に富んだ楽想の豊かさが魅力的だ。
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