2019年06月16日
大いなる祝福と歓喜、ガーディナーのバッハ:クリスマス・オラトリオ
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バッハは《クリスマス・オラトリオ》でキリストの降誕という一大イベントを、大いなる祝福と歓喜に満ちた曲想で飾った。
4大宗教音楽のひとつに数えられるが、神への畏怖の念の優る他の宗教曲に比べ、これは神との親密感が全体に浸透し、イエスがこの世に生を享けたことがどんな人間にも生きる喜びとなることをメッセージしている。
ガーディナーは1985〜88年にかけて強い意気込みをもって、集中的にバッハの4大宗教音楽を録音したが、彼の演奏の特徴と魅力が端的に示されているのはこの《クリスマス・オラトリオ》だろう。
速めのテンポで運んで、いかにも生き生きとしているし、オリジナル楽器ならではの伸びやかに澄んだ響きがそうした演奏にぴったりで、爽やかである。
彼の演奏スタイルは精神性を重視するドイツ系の指揮者と違い、イギリス人らしいリアルな感覚でアプローチ。
キリストの生誕を祝う喜びは、人々の日々の生活のなか、巷の情景となって浮かび上がってくる。
細部の描写がこまやかで、ユーモアに富み、全体に親しみや優しさ、あたたかみがこもっているのが特徴だ。
これほど作品にふさわしい喜ばしい生命感にあふれ、しかも、きりりと引き締まった様式感を合わせそなえた演奏はなかったと言ってよいだろう。
ガーディナー率いるイングリッシュ・バロック・ソロイスツの演奏は、目の醒めるような晴れやかさと華麗な表現で、どのピリオド楽器使用の合奏団よりも喜びに溢れた雰囲気を湛えている。
また手兵でもあるモンテヴェルディ合唱団の、これぞプロのコーラスと呼ぶに相応しい一糸乱れぬ統率と鮮やかなテクニックで、この曲に欠かすことのできない推進力を担っている。
勿論指揮者自ら創設したこのコーラスの力量はガーディナー自身充分心得ていて、彼らを前面に出した圧倒的な迫力で曲を進めていくアプローチも聴き所だ。
アージェンタ、オッター、ベーアらの7人の独唱者も古楽の専門家らしく、それぞれの歌詞の意味合いを活かした癖のない爽やかな歌唱に好感が持てる。
とりわけ福音史家を演ずるロルフ・ジョンソンはテクストの読みの深さと柔軟な表現力が秀逸で、ガーディナーの指揮に鋭敏に反応して、真摯で溌剌とした歌唱を聴かせてくれる。
1987年の録音であるにもかかわらず、ガーディナーの進めた古楽新鋭の気風は現在いささかも色褪せていない。
また音質の鮮明なことも特筆される。
この曲を初めて聴いてみたいという方にも是非お勧めしたいセットだ。
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