2019年06月20日
正統的な解釈、シンプルな美しさ、本家の強みを思い知らされるノイマン、チェコ・フィルの『わが祖国』
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
作曲家スメタナはこの連作交響詩『わが祖国』をチェコの首都プラハに捧げている。
歴史的に外部からの度重なる苦難を強いられ、そして奇しくもこの曲が作曲された後の時代にも、更に国家的な危機を迎えなければならなかったチェコの民衆の愛国心を鼓舞し続けた、まさにチェコの象徴とも言える作品だ。
この演奏は1975年にプラハのルドルフィヌム、ドヴォルザーク・ホールで録音されたもので、ヴァーツラフ・ノイマン、チェコ・フィルハーモニーのコンビの底力を見せたセッションとしても高く評価したい。
ノイマンは冷静なアプローチの中に緻密なオーケストレーションを再現し、しっかりした曲の造形を示している。
テンポの取り方も中庸をわきまえた、ごく正統的な解釈を貫いているところに本家の強みを思い知らされる。
ここでもチェコ・フィルは弦のしなやかな響きと管、打楽器の機動性が相俟って鮮烈な情景描写を表出している。
チェコ勢以外の演奏者の場合、こうした曲にはかえって厚化粧を試みて、シンプルな美しさと新鮮さを失ってしまう可能性が無きにしも非ずだ。
この曲を祖国への滾るような想いを秘めて演奏したのはカレル・アンチェルで、1968年のプラハの春音楽祭のオープニングで彼が亡命直前にチェコ・フィルを指揮したライヴのDVD及びCDの双方がリリースされている。
アンチェルの後を継いで同オーケストラの主席指揮者として返り咲いたのが、当時ライプツィヒ・ゲヴァントハウスの音楽監督だったノイマンで、彼はラファエル・クーベリック亡命後の一時期、常任指揮者としてチェコ・フィルを委ねられていた。
そしてアンチェル亡命後もソヴィエトの軍事介入を受けながらオーケストラを守り抜いて彼らの全盛期を築き上げた功績は無視できない。
ライナー・ノーツは10ページほどで英、独、仏及びチェコ語で作品と指揮者について簡単な解説付。
音質は鮮明で、欲を言えばもう少し低音が欲しいところだが、この時代のものとしては極めて良好だ。
尚この録音は1975年の日本コロムビア・ゴールデン・ディスク賞を受賞している。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。