2019年11月11日
1971年、米議会図書館に於けるスリリングなシェリング・ライヴ
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ワシントンの米議会図書館附属クーリッジ・ホールで1971年12月3日に催されたコンサートからのライヴ録音になる。
シェリングとグラフマンはその前年にも既に同ホールにおいて、『クロイツェル』を含むベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタのリサイタルで協演しており、こちらのライヴも同じブリッジ・レーベルからもう1枚のディスクでリリースされている。
ホールの音響がドライで、演奏者に接近した採録の為か音質は明瞭で生々しい。
欲を言えば適度な残響が欲しいところだが、この時代のライヴ録音としてはかなり良好なものだろう。
当日の伴奏者ゲイリー・グラフマンは、ソリストをそつなく支えてその長所を生かすというタイプではなく、曲の解釈に積極的に介入するピアニストだ。
2人の相性は決して最良とは言えないが、彼に触発されてかシェリングのソロは何時になく激しく、端正でマイナス面を出さない完璧主義者という、普段の世評とは裏腹のスリリングなライヴに仕上がっているのが興味深い。
とかくスタジオ盤ではやや物足りないところのあるシェリングだが、やはりライヴでは燃焼度が高い。
シェリングのヴァイオリンは、豊かな芳香の音色で伸びやかに歌うが、決して演奏家の恣意に陥ることなく、熱気をはらんで作品に深く食い入っていく強さも感じ取ることが出来る。
ここで聴けるブラームス、シューマン、ベートーヴェンと、彼のレパートリーの核をなす作曲家のグイッと迫り来る演奏には、誰もが魅了されてしまうだろう。
どの曲も独特の緊張感が漲った聴き応えのあるものだが、特にシューマンのソナタイ短調でのうねるような曲想の流れに感情の起伏を横溢させた表現が秀逸。
アンコール・ピースとしてはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調から第2楽章、そして最後に置かれたモーツァルトのソナタハ長調からのロンドは1970年のライヴより取られたものだ。
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