2019年06月23日
最晩年のリヒテル健在の記録
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リヒテルのテルデックへのライヴ及びセッション音源を3枚のCDにまとめたボックス・セットで、いずれもリヒテル最晩年の1993年から95年にかけて録音されたものだ。
いまだ衰えない溢れるような音楽性とかくしゃくとして揺るぎないテクニックが聴き所で、また音質も極めて良好。
1枚目の協奏曲集は指揮者にユーリ・バシュメットを迎えたパドヴァ・ベネト管弦楽団との協演で、バッハの協奏曲ニ長調BWV1054及びト短調BWV1058、それにモーツァルトのピアノ協奏曲第25番ハ長調K503の3曲が収められている。
リヒテルのオーケストラを引っ張っていくような溌剌として躍動的なバッハの音楽は歓喜に満ちている。
一方モーツァルトでは巨匠自ら弾き振りしているように聞こえ、バシュメットの主張がもう少しあってもいいと思う。
これらは1993年10月にパルマのテアトロ・レージョで催されたコンサート・ライヴで、ライナー・ノーツにはヤマハ・ピアノ使用と記されている。
2枚目のCDはグリーグがモーツァルトの原曲にセカンド・ピアノのパートを付け足して編曲したピアノ作品集で、エリーザベト・レオンスカヤとの連弾になる。
ソナタハ長調K545とファンタジアハ短調K475が93年8月16日にバイエルン州のヨハニスブルク城で、ソナタヘ長調K533/K494が同年8月25日にオスロで収録されたもので、いずれもセッションだがリヒテルとしては珍しくご愛嬌的なリラックスした演奏を楽しんでいる。
個人的にこのセットの中で最もお勧めしたいのが最後のCDに収められているボロディン弦楽四重奏団とのシューマンのピアノ五重奏曲変ホ長調Op.44で、毅然とした彫りの深い曲想表現の中に力強さが漲った威風堂々たる演奏が感動的だ。
1994年6月にフランスのナント及びグランジュ・ドゥ・メスレーで催されたライヴで、79歳のリヒテルがシューマンの輝くような若々しい情熱を謳歌しているのが信じられないくらいだし、またボロディンの颯爽とした明確なアプローチも好ましい。
尚このCDには同弦楽四重奏団による95年10月のベルリン・テルデック・スタジオでのセッションになる、鮮烈でしかもリリカルなシューベルトの弦楽四重奏曲『死と乙女』もカップリングされている。
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