2019年07月29日

SACDシングルレイヤーで蘇る音楽の万華鏡、幻想的な映像と華麗なる舞踏、春の夢にうなされるようなクリュイタンスのラヴェル


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軽妙洒脱で典雅なフランス趣味という指揮者クリュイタンスに対する評価は必ずしも的を得ていない。

彼は取り組む曲へのアプローチが柔軟である為に、ドイツ物もフランス物もそつなくこなす一方で、常に曲の核心を衝く鋭い洞察力を活かした非常にダイナミックな音楽作りに特徴がある。

特にラヴェルの作品では作曲家の緻密なオーケストレーションが織り成す綾模様や形式感を曖昧にすることなく鮮明に描き出して、そこに彼独自の情熱的な推進力を与えている。

またソロ・パートの楽器の特性を巧みに引き出して、パリ音楽院管弦楽団の魅力を充分に聴かせてくれる。

クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団の演奏には物理的な精緻さとは異なった特有の感性がある。

逆説的だが開放感に満ちた緊張とでも言うべきだろうか。

またそれぞれの楽器の音色の均一化は彼らのコンセプトには無い。

一つの楽器からも変化に富んだ陰影や色彩感を醸し出すことが彼らの奏法なのだ。

近年どのオーケストラでも楽員の技術向上及び均一化と、より精緻なアンサンブルを作り出す必要性から、こうしたフランス音楽に欠かすことができない要素がないがしろにされた興醒めの演奏が多い中で、彼らの表現ではまさに真似のできないフランス趣味が醍醐味と言える。

勿論それはクリュイタンスの稀に見る高貴で柔軟な音楽性と情熱に負っている。

このオーケストラ自体1967年をもって事実上解散してしまったので、往時の最盛期の音の魅力を知る上でも貴重な録音だ。

特にこれだけ熱気に包まれた表現の『ダフニスとクロエ』はクリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団の独壇場とも言える。

それは春の夢にうなされているような極彩色の幻想と法悦にも例えられる。

一口に言ってクリュイタンスは劇場感覚に極めて敏感で、柔軟なテンポの設定や曲想の盛り上げ方、それぞれの楽器の扱いや和声の処理にオペラやバレエにおける彼の豊富な舞台音楽の経験が活かされている。

また劇場空間において一種のカリスマ性で聴衆を煽動する術を熟知していた指揮者の一人だった。

オーケストラからも幅広い表現力を引き出していて、繊細であっても決して脆弱にならず、この曲に相応しい生気に溢れる熱い情熱がいたるところで感じられる。

ちなみにこの曲は1912年6月8日に作品の依頼者でもあったディアギレフ率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)によって初演されたが、そのわずか10日前に彼らはニジンスキーの主演及び振り付けで、ドビュッシーの『牧神の午後』を初演しているし、1年前にはストラヴィンスキーの『ペトルーシュカ』、更に1年後にはパリの楽壇を大混乱に陥れた『春の祭典』を初演している。

こうしたバレエ・リュスの時として過激なまでの創作バレエの潮流を、ラヴェル自身敏感に感じ取っていたに違いない。

それだけに『ダフニスとクロエ』においてもオーケストラにコーラスを純粋な音響として混入するなど、斬新な劇場的効果を狙っているが、それはあくまで人間の感性を基準に作曲されたもので、それまでのバレエの伝統を覆そうとしたり、難解な理論やテクニックの実践を試みたものではない。

それが当時のパリの聴衆にたやすく受け入れられた理由だろう。

『マ・メール・ロワ』は2種類存在するオーケストラ版のうち間奏曲を挿入したバレー・ヴァージョンに従っているが、指揮者のリリックで、しかもそれぞれの物語を幻想的な映像のように描写する表現が極めて美しく、またオーケストラのぬくもりのある音色も印象的だ。

また『高貴で感傷的な円舞曲』は鮮やかな色彩感に満たされた管弦楽法の再現が優れている。

1960年代初期の録音状態はかなり良好で、今回のSACDシングルレイヤー化によってオリジナル・マスターの音質が蘇っている。

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classicalmusic at 13:57コメント(0)ラヴェル | クリュイタンス 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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