2021年02月04日

リヒテルのアメリカ・デビュー盤


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この録音が行われた1960年はいわゆる冷戦下、アメリカから見れば“鉄のカーテン”で隔てられていた“東側”の演奏家が初めてアメリカに来演した年にあたる。

とりわけリヒテルの2ヵ月にわたるツアーはセンセーションを巻き起こし、RCAによるレコーディングも並行して行われた。

シャルル・ミュンシュとボストン交響楽団のサポートによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番は、明るくメリハリのあるオーケストラと、当時45歳でアメリカでのデビューを飾ったリヒテルの壮年期特有の覇気に満ちたダイナミックな表現がこの演奏の身上だろう。

ミュンシュの表現が常にそうであったように、この曲においてもベートーヴェンの音楽を内側に凝縮させていくのではなく、逆に外側に向かって発散させるような解放的な演奏が特徴だ。

それは曲自体の性格にもまたこの時期のリヒテルの演奏スタイルにも相性が良かったと思う。

双方に一期一会的な雰囲気があり、そうした意味でも独特の緊張感が伝わってきて興味深い。

ただミュンシュと異なる点は、リヒテルは決して音楽の流れに任せて即興的に弾くタイプのピアニストではなかったことだ。

このディスクに収められている2曲のピアノ・ソナタでも彼のヴィルトゥオジティを発揮した華麗な表現を聴かせてくれるが、それでいて骨太で綿密な音楽設計が明確に感知できる優れた演奏で、後年の内省的な世界を予期させるものがある。

リヒテルは深々とした呼吸で熱っぽく弾きあげた、ダイナミックな根太い演奏で、全篇に溢れる強烈なファンタジーが魅力だ。

この2曲の力強さと抒情性を、巧みに弾きわけていて見事で、全体に、極めてエネルギッシュな表現である。

彼自身はこの演奏を嫌って失敗作のように言っていたが、音楽的な造形からも、またその表現力の幅広さと強烈なダイナミズムからもベートーヴェンに相応しい曲作りで、本人であればともかくあらを探すような次元の演奏では決してない。

1960年の録音になり音質は非常にクリアーで、僅かなテープ・ヒスを無視すれば臨場感にも不足しない、充分満足のいく音響が得られている。

なお協奏曲の方はXRCDとしてもリリースされていて、こちらも選択肢のひとつになる。

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classicalmusic at 17:17コメント(0)リヒテル | ミュンシュ 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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