2019年08月16日
男の美学、英雄の美学!ミュンシュならではのサン=サーンスのスポーツ的快感、XRCD盤
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れっきとした交響曲だが、スポーツ的快感に浸らせてくれる作品がこのサン=サーンスの手になる《第3番》だ。
サン=サーンスは、音楽だけでなく天文学、詩作、哲学、考古学にも関心を持ち、旅行作家としてはベトナムにまで足を伸ばすほどの多芸多趣味で好奇心旺盛な音楽家であった。
この交響曲にはそうしたサン=サーンスが持つ多様性と何でも吸収して栄養にしてしまう包容力が渾然一体となって盛り込まれた華やかさがある。
前向きかつ健全で、抒情性にも劇性にも健やかな人間性が感じられ、聴き手を途方もない高揚感へ誘う、そんな吸引力に溢れているのである。
それほどの名曲だから、フランス系の指揮者ばかりでなく、トスカニーニ、アンセルメ、カラヤンらが名盤を残してきた歴史がある。
しかし、シャルル・ミュンシュの録音こそは頂点に聳え立つと言って間違いないだろう。
フランスの指揮者としては例外的に豪放磊落な性格を持ち、作品を祭りの最終日の熱狂のように再現しては聴き手を興奮へと駆り立てるテンペラメントの激しいマエストロである。
このサン=サーンス作品はそんなミュンシュのために書かれた交響曲でもあるかのようで、演奏は迷いなく、ストレートに燃焼、スケールも大きければ、表現も骨格が太く、逞しい。
男の美学、いや英雄の美学とでも言えばよいのか、壮麗さにも芯の強さがあり、華やかさにも燃え盛る炎のような勢いがあり、美しさにも太陽の輝きを思わせる光と色彩がある。
オーケストラはミュンシュが音楽監督を務めていたボストン交響楽団、豪快なる鳴りっぷりが最大の売りで、一回りも二回りも大きくなったオーケストラ音楽を堪能させる。
ことにそのエネルギッシュな表現力は格別で、まさに打ち寄せる大海の大波に浸るかのようである。
音色は潤い豊かで、響きは層が厚い。
アンサンブルは緻密な弦セクションが素晴らしいが、朗々と鳴り響くトランペット、ホルン、トロンボーンの金管セクション、空気を裂くかのようなパーカッションこそはこの演奏の最大の魅力であり、それがスポーツ的快感へと誘う原因にもなっている。
フランス音楽は何も優雅さと香りだけではなく、燃え盛る松明のような音楽は聴き手を思わず熱くする。
1959年収録だから、既に60年が経過したステレオ初期の録音だが、XRCD化による高音質化も相俟って、当時のレコーディング・テクノロジーは既に完成されていたと納得させるだけの密度を誇っており、この点でも納得の名曲名盤である。
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