2019年08月18日
幾何学的な対位法を描いたグールドの天才的なインスピレーションと創意に溢れたバッハ
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2005年にリリースされた12枚組のセットに比べて比較的アバウトな編集で、組曲はパルティータのみ、フランス組曲やイギリス組曲は含まれていない。
またゴールドベルク変奏曲に関しては、彼が23歳の時のセンセーショナルな初録音が取り上げられている。
それにしてもこの6枚のCDはグールドのバッハへの思索を伝えて余りあるボックス・セットだ。
1955年にバッハの録音を開始して以来、その解釈の斬新さ、奇抜な奏法は彼より前の時代のピアニストのバッハ観を覆し、バッハに現代的な生命を吹き込んだ革新的な出来事だった。
勿論彼の仕事はバッハに限ったことではないが、とりわけ対位法作品への傾倒は尋常ならざるものがある。
彼の演奏の特徴は過剰なカンタービレを退け、むしろ極めてドライな感覚でひとつひとつの声部を独立させて、あたかも幾何学的な対位法をイメージさせる。
その構成力の巧みさは言うまでもないが、音の無い部分にまで感知される緊張感の持続は印象的だ。
そうした意味でグールドは、ともすれば行き詰まりになりかけていたそれまでの解釈を劇的に打破したピアノ音楽の改革者でもあり、更に後の時代のピアニストに多くの示唆を与えた新時代の音楽家だった。
彼自身がそれを意識していたか否かに拘らず、天才的なインスピレーションと創意に溢れた音楽は今もってその光彩を失っていない。
リマスターの効果で音質、音量共にレベル・アップされているが、マスター・テープに由来すると思われる音の歪みが数箇所に聞かれる。
完全節約仕様の為、ライナー・ノーツは無い。
収録曲目 CD1. ゴールドベルク変奏曲BWV.988、平均律クラヴィーア曲集第2巻より第9番のフーガ、同第14番のフーガ CD2. インヴェンションとシンフォニアBWV.772-801 CD3. トッカータBWV910-916 CD4. パルティータ第1番BWV.825から第5番BWV.829 CD5. パルティータ第6番BWV.830、6曲の小プレリュードとフーガBWV833-938、プレリュードとフゲッタBWV.899及び同902、9曲の小プレリュードBWV.924-928及び同930、フーガハ長調BWV.952、フゲッタハ短調BWV.961、フーガハ長調BWV.953、プレリュードとフーガBWV.895及び同900 CD6. フーガの技法BWV.1080 コントラプンクトゥス1-9(パイプオルガン使用)、同1、2、4、9、11、13及び14(ピアノ)、BACHの名によるプレリュードとフーガ変ロ長調BWV.898
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