2019年06月24日
フレー、将来に向けたプロセス、モーツァルトのピアノ協奏曲、リハーサル及びレコーディング模様
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ダヴィッド・フレーとの前作『Swing Sing and Think』でも監修を担当したブリューノ・モンサンジョン監督が、今回はモーツァルトの2曲の協奏曲での彼らのリハーサル及びレコーディングの模様を163分の作品にまとめあげたDVDになる。
これらはいずれもCD制作時の副産物的なドキュメンタリーである為に、目立った演出効果を狙ったものではない。
むしろフレーと指揮者ヴァン・ズヴェーデンそしてフィルハーモニア管弦楽団のありのままの録音風景が、独特のカメラ・ワークで捉えられている。
しかし彼らがあたかもひとつのドラマの中の役柄を演じているように見えるのは、監督の手馴れた手腕によって凝縮された各人の個性と、巧みなカットで編集された結果だろう。
こうしたドキュメンタリーは、彼らがキャリアの出発点に立っている若手のアーティストであるがゆえに可能な作品だ。
もし巨匠クラスの指揮者やピアニストであれば、決して舞台裏の姿などは公開しないだろうし、音楽稽古についても同様で、忌憚の無い意見の交換でお互いの音楽の接点を探っていく過程が映像を介して理解できるのが魅力だ。
この作品は大きく2つの部分に分けられる。
前半は2曲の協奏曲の間にそれぞれ2つのディスカッションを挟んだもので、後半は全曲通しのレコーディング風景になる。
中でも興味深いのはフレーと指揮者の音楽稽古で、こうした試行錯誤は彼らの将来の演奏活動にとっても重要なプロセスであるに違いない。
この映像を見るとフレーの演奏姿と顔の表情は、やはり風変わりな印象を与える。
それがモンサンジョン監督の創作意欲を刺激するところなのかもしれないが、どこにでもあるようなパイプ椅子に腰掛け、長身の体を折り曲げて上半身を鍵盤にかぶせるようにして弾く奏法は、かつてのグレン・グールドを彷彿とさせる。
その音楽はモーツァルトにしてはかなり感性になびいたものであり、古典的な均衡からは幾分離れたファンタジーの世界に翼を広げる彼のユニークな解釈が特徴的だ。
フレーはいくらか耽美的になる傾向を持っているので、モーツァルトの様式感や形式美を感知させるという点ではシュタットフェルトに一歩譲るとしても、あくまでもデリケートなシルキー・タッチで仕上げた流麗で品の良い表現は、モーツァルトの音楽自体が持つ限りない美しさと幻想を巧みに引き出している。
元来モーツァルトの音楽のスタイルはインターナショナルな性格を持っているので、そうした意味では彼らのように全く異なる解釈があっても当然のことだろう。
フレーは自己のフランス的な感性を、一見対立するようにみえるドイツの音楽に最大限活かすことに挑戦して、異なった音楽上の趣味の融合を試みている。
指揮者ヴァン・ズヴェーデンも完全に彼に肩入れして、調和のとれたきめ細かい指示でサポートしているところに好感が持てる。
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