2019年09月14日
マーラーの可能性を切り拓いたブロムシュテット、バンベルクによる第9番
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昨年2018年6月にバンベルク・コンツェルトハレで行われたライヴ録音だが、91歳のブロムシュテットがマーラーの交響曲第9番ニ長調を実に矍鑠とした指揮で、ひとつの革新的なマーラー像を示したところが高く評価される。
これまでこの曲はマーラーの他の作品の持つ傾向や彼の心理状態を反映させた、世紀末的な諦観や死生観、或いは病的なほどの耽美な表現がつきまといがちだった。
ブロムシュテットはこうした解釈や先入観を一度拭い去って、現代の指揮者としての作品の再構築をしているようだ。
それだけに隅々まで一点の曇りもない透徹したサウンドの中に、マーラーの意図した音楽的構想がくっきりと浮かび上がっている。
そこには感傷的でもなければ脆弱さも感じられない、至って健康的で堂々たるマーラーが響いてくる。
長大な第1楽章も全く飽きさせないだけの高い音楽性を保った構成が素晴らしい。
第2楽章での田舎風のレントラーにも特有の力強さが漲っているし、活性化されたロンドや清冽な終楽章にも人生の黄昏というイメージは似合わない、むしろ新しい生命の神秘とでも形容したくなる演奏だ。
随所に表れるソロの部分を聴く限りではバンベルク交響楽団の団員個人個人の音色や奏法にはそれほど華やかさはない。
それでも、おそらくヨーロッパでも最も美しいハーモニーを創り上げるオーケストラのひとつだろう。
特にヤクブ・フルシャが首席指揮者に就任してからは、彼らのアンサンブルのテクニックは格段に向上している。
ブロムシュテットが彼らとの共演にマーラーの第9番を選んだことも、スタンドプレイをしなくてもこの曲の魅力を充分に表現し切ることができる力量と柔軟な姿勢に注目したからだろう。
将来の彼らの演奏にも期待したい。
尚音質は極めて良好で、ライヴながら客席からの拍手や雑音は皆無だ。
1枚ずつ独立したシンプルなジャケットとライナー・ノーツを収納するダブル・ジャケット仕様になっている。
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