2019年08月01日
鬼才ゲルギエフ、手兵マリインスキー歌劇場管弦楽団の底力を見せつけた壮絶なチャイコフスキー
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1988年にマリインスキー劇場の首席指揮者、キーロフ・オペラの芸術監督に就任して以来、卓越した音楽性、芸術性そして統率力で、数々のロシア・オペラを全世界に向けて発信し続けてきたゲルギエフ。
近年は、拠点はロシアに置きつつ、活動の場をニューヨーク、ウィーン、ザルツブルクなど世界の舞台に最も精力的な活動をしている指揮者である。
1998年のザルツブルクでウィーン・フィルと行ったチャイコフスキーの交響曲第5番で、その希にみるカリスマ性に満ちた実力を証明して見せた。
ここに聴く1997年にフィンランドでスタジオ収録された『悲愴』に懸ける執念を窺わせる壮絶な演奏は、手兵マリインスキー歌劇場管弦楽団の底力をも見せつけている。
またスコアの中に彼が見いだした『間』を巧みに使った曲の運びと強靭な統率力で一気に聴かせる手腕は並外れている。
例えば第1楽章中間部での金管楽器を殆ど限界まで咆哮させる表現は通常の解釈からは逸脱しているが、この曲全体の仕上がりから見ると決して不自然ではない。
終楽章は鉛のように重く冷たい。
そしてあたかも出口の無い迷宮に迷い込むような暗く不気味な雰囲気に救いは感じられない。
その後の自分を待っているものが人生の終焉でしかないことをチャイコフスキー自身が知っていたかのような表現だ。
筆者は約10年前にこのコンビによる実演に接したことがあり、プログラムは『1812年』『展覧会の絵』『悲愴』だったが、断然このCDの方が素晴らしく、複雑な思いをしたことが思い出される。
そこでは、同じ指揮者と楽団の組み合わせとは思えないくらい整然とコントロールされた音楽が鳴っていた。
良い言葉で言えば「洗練された」演奏、悪く言えば「ロシアスタイルを失ってしまった」演奏になっていた。
しかし、このチャイコフスキーは、旧来のロシア・オケの演奏スタイルを踏襲した強烈な印象のある演奏だ。
カップリングは『ロメオとジュリエット』で、シェークスピアの戯曲に着想を得た3曲の幻想序曲の1つ。
ここではオーケストラにもう少し柔和な表情があってもいいと思うが、バレエ音楽を髣髴とさせる充分にスペクタクルでスリリングな再現だ。
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