2019年10月08日

マニエリスムの再評価


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日本人によって書かれた殆ど唯一のマニエリスムに関する本格的な論述である。

マニエリスムとは危機の時代の文化である。

世界調和と秩序の理念が支配した15世紀は、黄金のルネサンスを生み出した。

だが、その根本を支えてきたキリスト教的世界像が崩れ、古き中世が解体する16世紀は、秩序と均衡の美学を喪失する。

不安と葛藤と矛盾の中で16世紀人は「危機の芸術様式」を創造する。

古典主義的価値をもつ美術史により退廃と衰退のレッテルを貼られてきたこの時代の芸術の創造に光を当て、現代におけるマニエリスムの復権を試みた先駆的な書である。

ルネサンスとバロックの狭間に咲いたあだ花のように蔑視されてきた芸術が開花した歴史的背景とその再評価が若桑氏の深い洞察と広範囲に渡る研究によって明らかにされていく。

プラトンによって唱えられた現世における人間の姿、つまり肉体という牢獄に閉じ込められた精神の苦悶とそこから解き放たれる自由への渇望をこの危機の時代にミケランジェロは身を持って体験し、それを自分の作品に具現化させようと試みた。

それはもはや現実的な実態とはかけ離れた精神的な実在に迫る表現であり、ルネサンスの物理的に精緻な物差しを使って彼の作品を計り、理解しようとすることは無謀だろう。

更にブロンヅィーノに至ってはミケランジェロの三次元的な形態は受け継がれたものの、その精神は寓意によってすり替えられた。

彼は自分の作品を病的なまでに寓意で満たし、後の時代の人々が解読不可能になるほどの技巧を凝らせた。

一方パルミジャニーノは既成の空間を反故にして見る者の視線から焦点を逸らし、なかば強制的に思考の迂回を図った。

そうした方法がヴァサーリの言うマニエーラ、つまり作品の背後にある作者の思索を感知させる手段として追求されたのがこの時代の芸術だろう。

そうした意味で本書はミケランジェロとその時代を画したアーティスト達の作品を理解するうえで非常に有益な示唆を与えてくれる。

また後半部に置かれたマニエリスト達の作品の宝庫、フランチェスコ・デイ・メディチのストゥディオーロについての詳述も圧巻だ。

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classicalmusic at 12:37コメント(0)芸術に寄す | 筆者のこと 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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