2019年07月08日
興奮の坩堝、ミュンシュ&パリ管旗揚げ公演、SACDシングルレイヤー盤
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
フランスの威信をかけて創設されたパリ管弦楽団の旗揚げ公演として1967年11月にパリのシャンゼリゼ劇場で催されたライヴの録音がSACDシングルレイヤー化され再登場した。
ミュンシュはその初代音楽監督を務めたが、巨匠76歳、死の1年前の演奏にも拘らず、その凄絶な指揮ぶりには並大抵でない気迫が満ちている。
オーケストラにもフランスの誇りというものが感じられ、ただ単に力任せの演奏とは次元を異にする風格と気品がある点も素晴らしい。
ただこうした表現は演奏家にとっても、また聴衆にとっても一期一会的なライヴが命であり、当日その場に居合わせた人だけが本当の感動を分かち合えたのだろうと思う。
テンポを著しく変化させ、楽団を煽り立てるように時折叫びながら指揮するミュンシュの『幻想』交響曲は、この曲の常識から逸脱した悪魔的な側面を極限まで追求している。
狂気に最も近いというのか、ベルリオーズがなぜこの作品を書かずにはいられなかったか、その情熱の軌跡をあくまでも熱く、そして迸り出るような勢いで再現、熱風にも似た音のドラマを作り出している。
パリ管弦楽団も彼の指揮に必死について行こうとする熱意と一体感があり、楽章を追って増幅する曲想の渦に聴衆を巻き込んでいく推進力は尋常なものではない。
このラテンの血で聴く『幻想』は、感動を超えて冒険にも似た経験に浸らせる。
ドビュッシーの交響詩『海』でもテンポの即興的な抑揚は、何かに取り憑かれたようなところがあり、通常では考えられないような世界が描き出されている。
彼はこの曲を陰影深く茫洋とした印象派の作品として仕上げるよりも、むしろ奔放で放射的なエネルギーの発散の中に表わして、オーケストラから一種のドラマ性を引き出している。
こうしたアプローチもやはり彼独自の解釈だが、聴き手に有無を言わせず説得してしまうような隙の無いパワーにも溢れている。
録音状態は当時のライヴとしては非常に良いものだ。
欲を言えばもう少し低音の伸びが欲しいところだが、シャンゼリゼ劇場は主としてオペラやバレエ公演のための典型的なドライな響きが身上の演奏会場であり、それがかえって各パートの楽器の響きを良く捉えて、生々しい臨場感が伝わってくるのも事実だ。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。