2020年05月22日
本場のクヮルテットよりも濃厚で土俗的なアマデウスSQのスメタナ&ドヴォルザーク
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ブラームスやウィーン古典派の音楽解釈に大きな成果を挙げたアマデウス弦楽四重奏団は、40年もの長い活動期間を持っていただけに、レパートリーも前述のものに限らず大きな広がりがあった。
当然、チェコの国民楽派の音楽も手中に収めていたが、初出時はアマデウスSQとしては珍しいレパートリーとして話題となったアルバムだ。
ドヴォルザークの《アメリカ》は何よりも表現が非常に濃厚で、深い陰影を湛えており、聴き手に大きな感銘を与える。
強烈な節回しによる表情がいかにも土臭く、実に雄弁にドヴォルザークの音楽を語っているのだ。
第1楽章の最初のテーマから、附点リズムの弾み方やアクセントの鋭さが他のクヮルテットとはまるで違い、曲に体当たりする気迫が段違いなのだ。
切々と迸る望郷の念、テンポを大きく落としメロディをずり上げて歌う第2主題の表情の豊かさ、展開部の土俗的な語りかけや、情熱が激しく爆発するような刻みのアクセントも物凄い。
第2楽章も真実性があり、ここではハーモニー全体が哀切に歌い、1つ1つの楽器が魂の声を告白する。
ブレイニンの弾く第1ヴァイオリンなど、泣いているかのようだし、全員が音楽に体ごと共感し、全身を投げ出していることが分かる。
フィナーレも内声が十二分に鳴り切って効果をあげ、大シンフォニーにも匹敵する響かせ方も最高だ。
スメタナの《わが生涯より》は、《アメリカ》ほどの凄演ではないが、やはり作曲者の魂の声を伝えて余すところがない。
しかも常に美感を失うことなく、あくまで音楽的に成し遂げてゆくのである。
第1楽章は冒頭のいのちの和音に続いて、ヴィオラが怨念をさえ感じさせつつ運命の動機を奏する。
幼き日の想い出のように幸せな第2主題も他のどの団体よりも美しいが、そこに至る気分の変化や弱音のハーモニーの死にそうな意味の表出、チェロの微かな呻きも素晴らしい。
展開部の入りは凄い最弱音で始まり、チェロの運命の動機と第1ヴァイオリンのアクセントとの対話が意味深く、やがてシンフォニックな立体感が聴き手を圧倒する。
第2楽章は深い呼吸で少しもあわてずに進行、ヴィオラの奏する副主題のユニークで愉しい雰囲気、語りかけるリズムが忘れられない。
第3楽章はソロも合奏も、何もかもが雄弁で粘着力を持ち、訴え心、憧れ心が連続する。
全員が(そして作曲者スメタナが)心のすべて、綺麗ごとでない心の痛みを一生懸命語りかけ、体ことぶつけるのだ。
フィナーレに入るとピツィカートを伴った愉しい第2主題が印象に残り、厚みのある情感も豊かだが、ついに耳鳴りの音が聴こえ、運命の動機が死んだ気で奏され、地獄へと落ちてゆく。
どの楽章も《わが生涯》の物語に満ちているが、その1つ1つをこんなに見事に解明した演奏も珍しいのではあるまいか。
いずれも1977年のセッションで、録音もオン・マイクで生々しい。
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