2019年09月21日
半世紀に亘ったムラヴィンスキー、レニングラード・フィルの宿命的なコラボ
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エフゲニー・ムラヴィンスキーの業績を偲ぶ5枚組のスペシャル・エディションで、2014年にメロディア・レーベルからリリースされた。
1938年に、ムラヴィンスキーはレニングラード・フィルの常任指揮者に就任、士気が低迷していたオーケストラの立て直しに着手する。
透明な音色と凝集度、微妙で繊細なニュアンスと重厚で雄大なクライマックスとを併せ持つ洗練された孤高の演奏は、就任当初の録音を聴いても、金管の音色を除けばロシアのオーケストラであることが連想できないほどである。
晩年に至るまでの演奏様式の基本は就任当時既に確立されていたことが窺えるが、楽曲に対する解釈は年代と時期に従い常に変化と発展に富んでおり、晩年になるにつれて深度と表現の自由度とが増し、よりアカデミックになり、音色もより乾いたものになっていったと言うことができる。
50年間に渡りムラヴィンスキーの薫陶を受け続けたレニングラード・フィルとの数々の演奏は、トスカニーニを思わせるムラヴィンスキーの厳密なスコア解釈、テンポ設定を高度なアンサンブルによってレニングラード・フィルが手足の如く表現すると言う非常にレベルの高いものであり、消え入りそうなピアニッシモから雷鳴の様なフォルティッシモに至るまで一糸乱れぬ演奏は西側でも非常に高く評価されていた。
このセットにはそんな半世紀にも亘ったレニングラード・フィルとの膨大な演奏記録のうち、1949年のベートーヴェンの『田園』から82年のワーグナーの『マイスタージンガー』の前奏曲まで11人の作曲家の作品14曲を採り上げている。
音源はそれぞれの年代から比較的まんべんなく集められているが、選曲となると彼らにとって最も重要な仕事であった筈のショスタコーヴィチが全く組み込まれていないし、西側での初録音になるチャイコフスキーの交響曲は第4番と第6番だけで何故か第5番が抜けている。
またブルックナーに関してはステレオ音源の第9番のみだが、ムラヴィンスキー特有の鋭利に切り込む作品への解釈と個性的なサウンド、そしてオーケストラの統率美はどの曲においても厳然としていて、彼らの宿命的とも言える水も漏らさぬコラボレーションがひしひしと伝わって来る。
例えばチャイコフスキーの交響曲第4番終楽章の尋常とは思えない高揚したテンポに、打てば響くように呼応するレニングラードの凄まじいばかりの練達の技には驚かざるを得ない。
彼らが得意とした20世紀物ではスクリャービンとストラヴィンスキーでその洗練された妙味を発揮している。
音質は1940年代から50年代初期の古い音源でも保存状態の良いものが選ばれ、かなり聴きやすい状態にリマスタリングされている。
メロディアらしい全く洒落っ気のないごくシンプルなボックスに黒い紙ジャケット入りで、18ページほどの露、英、仏語によるライナー・ノーツ付。
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