2019年06月29日
バルトリ、古楽レパートリーを発掘、ステッファーニの世界初録音アリア集
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ナポリ派のオペラ隆盛期にドイツで聖職者として作曲を続け、ヘンデルにも多大な影響を与えたイタリア人、アゴスティーノ・ステッファーニの作品集。
ここ数年チェチリア・バルトリは古楽のレパートリーを開拓して隠れた名曲を発掘することに余念がないが、このアリア集はこれまでに彼女が採り上げた最も古い時代のもので、脂の乗り切った現在のバルトリの力量を示した1枚だ。
当然カストラートの歌唱を前提に作曲されたアリアはコロラトゥーラの華麗な技巧を駆使したパッセージとリリカルなカンタービレが対置されているが、彼女の敏捷なアジリタのテクニックと晴れやかな歌唱は当時の歌手達のベル・カント唱法を彷彿とさせるものがある。
ボーイ・ソプラノとしてキャリアを積んだ作曲者自身がカストラートだった可能性もライナー・ノーツで指摘されているが、それについての明確な記録は残されていないようだ。
またこの曲集ではトラック6,12,18,23にフランスのカウンター・テナー、フィリップ・ジャルスキーとのデュエットが収録されている。
いくらか変わった顔合わせだが不自然さはなく、古楽の専門家としてのジャルスキーのスタイリッシュでデリケートなソプラノにバルトリのメゾが絶妙に絡んでいる。
オーケストラはスイス生まれでオルガニストでもあるディエゴ・ファソーリス率いるイ・バロッキスティで、スイス・イタリア語圏のメンバーで構成された文字通りバロック音楽専門のピリオド楽器使用の合奏団だ。
指揮者の指導もあってアンサンブルは良く鍛え上げられていて、特に管楽器がはいるアリアではバロック特有の絢爛豪華な音色を堪能させてくれる。
コーラスはスイス・ラジオ・テレビ放送合唱団。
尚この限定盤デラックス・バージョンはハード・カバーのブックレットに綴じ込まれたタイトな紙製スリーブにCDが収納されている。
ブックレットの方はカラー写真入りで163ページあり、作曲家、聖職者、そして外交官としても当時のヨーロッパで暗躍したとされるアゴスティーノ・ステッファーニへの考察が英、仏、独語で掲載され、後半にはイタリア語全歌詞の対訳が同様に三ヶ国語で付いている。
アメリカの女流ミステリー作家でヴェネツィア在住のダナ・レオンの小説『天国の宝石』が着想を得たとされる今回のプロジェクトは、いずれDVDでも発売されるようだ。
その他に同CDのスタンダード盤、ダナ・レオンの小説がそのまま一冊付いた豪華版や2枚組のLP盤が同時リリースされている。
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