2019年11月04日
ナポリの狂気、あるいは笛の饗宴、シュテーガー「1725年」をキーワードに厳選した珠玉のリコーダー作品集
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現在流通していないボーナスDVD付のCDは『ナポリのフォッリーア1725年』と題されていて、同年アレッサンドロ・スカルラッティと知己を得るためにナポリにやって来たクヴァンツが、奇しくも笛の音楽をイタリアに広める結果になり、その影響下に作曲された笛と弦楽のための作品7曲が収録されている。
ここでは総てナポリで活躍した作曲家を扱っていて、当時ナポリ派オペラ全盛期の音楽都市としての盛んな創作活動に加えて、笛の音楽が如何に親しみを持って当地に迎え入れられたか想像に難くない。
因みに1725年のナポリの手稿譜には既に24曲の笛のための協奏曲が残されているそうだ。
リコーダー・ソロとバロック・アンサンブルの指揮を兼ねるモーリス・シュテーガーは既にいくつかのCDをリリースしているスイスのリコーダー奏者だが、人間的な情感の総てを笛に託して表現することができる逸材だ。
それぞれの曲に対するその柔軟なアプローチと表現力や情緒の豊かさ、またそれを実現するテクニックの巧みさも特筆される。
そしてナポリという混沌とした文化の坩堝の町のイメージからか、彼の演奏も更に自由闊達になって、題名どおりまさに常軌を逸した狂気の雰囲気さえ醸し出している。
約26分ほどのDVDではアンサンブルの合わせと録音風景及びシュテーガーのインタビューが収められているが、彼がどれほど南イタリアの音楽、特にナポリのそれに情熱を持って取り組んでいるかが興味深い。
それは当時の北ヨーロッパの音楽に比べれば熱狂を伴った一種のカタルシスだったに違いない。
またアリア風のカンタービレがリコーダーにとっても如何に重要であるかも熱弁している。
ここで踊るようにリコーダーを吹く彼の演奏姿も印象的だ。
この映像では演奏されているひとつひとつの古楽器も美しく撮影されているが、シュテーガーは通奏低音に通常使われるチェンバロ、オルガン、アーチリュート、テオルボ、バロック・ギターの他にプサルテリウムを取り入れている。
チェンバロの原器とも言われ、特殊なマレットで叩く弦を張った共鳴板を持っていて、その音色には東洋的な神秘さがある。
東方からも多大な影響を受けていた港町ナポリならではの響きの再現だろう。
彼の仕様楽器はデンナー、ブレッサンなどのモデルでリコーダーの数だけでも6本になる。
尚ピッチと調律はa'=415,1/6ミーントーンの表示がある。
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