2019年07月03日
チェコのクヮルテット以上にノスタルジックな味わいが色濃く漂うアルバン・ベルクSQの『アメリカ』『わが生涯より』
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ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』とスメタナの弦楽四重奏曲第1番『わが生涯より』の2曲は、さすがにスメタナ弦楽四重奏団を筆頭にチェコの四重奏団の優れた演奏が多いが、アルバン・ベルク弦楽四重奏団のライヴ録音も素晴らしい。
ウィーンの音楽家たちがその出自をボヘミアに持つことは珍しくないが、それだけに彼らはチェコの音楽に対して、まるで自分たちの音楽であるかのような親近感を持ち、非常にこなれた演奏を展開する。
ウィーンを本拠としたアルバン・ベルク弦楽四重奏団も例外ではなく、都会的でスマートな要素はあっても味わいは濃い。
そして実に剛毅な造形を持ち、スケールも大きく、楽想の描き分けも良く考えられており、ライヴの熱気も孕んで最高にホットな演奏になっている。
演奏の特徴としては両曲ともアルバン・ベルク弦楽四重奏団特有の鋭利で彫りの深い表現が良く出ていて、しかも4人が多くのソロ部分を縦横に奏でながら全く隙の無い精緻なアンサンブルを聴かせてくれる。
深い感情移入の感じられる懐かしさのこもった旋律の歌い回し、今この瞬間に音楽が生まれ出てきたかのような即興性溢れる自在な緩急、鋭く切れ込んでくる厳しい表情によって造形される隈取りの明確な輪郭など、ライヴの美点が集約された素晴らしい演奏だ。
第1ヴァイオリンのピヒラーの歌いぶりには、例によって蠱惑的と形容したくなる得も言われぬ美しい音色を駆使した、ある意味チェコの団体以上にノスタルジックな味わいが色濃く漂っている。
アンサンブルもいつものように高度の緻密さを保ちつつ、より即興的で自在感に溢れており、聴き古された作品から、驚くような新鮮な表情を引き出している。
どちらもウィーン・コンツェルトハウスのコンサートからデジタル録音されたもので、各パートの明瞭な音色を堪能できる。
1989年録音の『アメリカ』にはドヴォルザークが織り込んだ土の薫りは期待できないが、独特の洗練されたスマートさと大胆かつ快活な解釈が魅力的だ。
第1楽章冒頭、第1主題を提示するヴィオラをはじめ、全員の心からの共感が感じられる歌心としなやかな表情、精妙なアンサンブルなど、結成以来、弦楽四重奏の新しい可能性を追求してきたアルバン・ベルク弦楽四重奏団ならではの新鮮な魅力溢れる演奏である。
一方ドヴォルザークと同様、チェコの音楽の語法や特徴を巧みに用いた1990年のスメタナの『わが生涯より』はよりドラマティックで語り口調の楽想が絶妙に表現されていて秀逸だ。
ライヴでの自由で即興的な味が曲想と見事に合致した、手に汗握るスリリングな演奏で、民俗的な要素と悲劇的な内容を見事なバランスで表現していて、熱い共感が伝わってくる。
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