2019年07月28日
天才指揮者カルロス・クライバー、死の直前、謎を秘めたスロヴェニアへの道のり
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このBlu-rayではカルロス・クライバーその人の哲学と人間性、とりわけ彼の音楽に対する創造性、そして彼自身によって編み出された体全体をフルに使った指揮法の妙技についての解析が非常に興味深い。
彼自身は公式のインタビューに殆んど応じなかったが、彼の実姉や仕事で彼と実際に関わった人達の証言はいずれも貴重だ。
この天才指揮者がどのように隣人に接し、またどのようなアプローチで楽曲を捉え、オーケストラを率いていたかに焦点を当てた構成になっている。
尚、日本語の字幕スーパーに関しては、例によっていくらかやっつけ仕事的で、かなり危なっかしい訳だが、許容範囲とすべきだろう。
クライバーは良くも悪くも生涯芸術家であり続けた。
もし仮に彼のために理想的な条件の総てを提示して指揮を依頼したとしても、それが実現するかどうかは甚だ疑わしい。
何故ならそれはひたすら彼の内面に関わる問題だからだ。
もし自分自身を満足させる演奏ができないと判断した時にはいつでも、彼は何の躊躇もなく、また誰に遠慮することなく仕事を放棄した。
周囲がそれを許さなくても彼自身が許した。
それを駄々っ子の気まぐれと言ってしまえばそれまでだが、彼にしてみればそれは自己との葛藤の結果であり、そうした選択しか彼には残されていなかった。
晩年のクライバーは壮年期に比べると、ただでさえ少なかった音楽活動がめっきり減っただけでなく、その質にも変化をきたしていたとされる。
既に末期症状と診断されていた癌の影響は免れなかっただろうし、それに伴う彼の創造力の枯渇が原因かも知れない。
いずれにしても彼が指揮棒を取るまでには、マテリアル的にも心理的にも相応の準備と充電期間が必要であったことは疑いない。
しかし最終的に生涯の音楽活動が、彼の人生にとって何であり得たかについては、死の直前に単身で赴いたスロヴェニアへの道のりのエピソードも含めて一抹の謎を秘めている。
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