2019年10月28日

鮮烈な革新、バッハ演奏に対する芸術的信念を実践したシェリング最初の無伴奏


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ヘンリク・シェリングの最初の無伴奏全曲録音であるが、音楽的には既に完成していて、1967年の2回目のステレオ盤に全く遜色の無い出来栄えだと思う。

バッハの無伴奏ヴァイオリンの全曲録音の歴史を辿ると、メニューインが34-35年、エネスコ40年、ハイフェッツ52年、シェリング55年、シゲッティ55-56年、グリュミオー60-61年、シェリングの再録音67年そしてミルシテインの再録音74年となる。

なかでもシェリングのそれは他の誰よりも精緻で客観的であることを認めざるを得ない。

まだバロック音楽自体が再認識され始めたあの時期に、彼は既にバッハ演奏に対する芸術的信念とも言うべき哲学を、自身の演奏に実践していたのだ。

それはそれまでの無伴奏に対する概念を覆すほど鮮烈なものだった。

何故ならこの曲を歪曲することなく、誠実にしかもあるがままに再現することに成功したからだ。

とりわけ55年のモノ録音は、あの時代にあって冷徹なほど曲の構造を分析し、それを忠実に再現するために彼独自の奏法を開拓した革新的な表現が聴ける。

バッハの楽譜を克明に読み、作品の意思を汲み取ろうとする姿勢が演奏に直接反映されており、それが無伴奏ながら本質的にポリフォニックなこの音楽の構造を、はっきりと際立たせる表現を生む。

また若いからこその純粋で考えすぎない潔さに魅力があり、深謀遠慮も手練手管もなければ迷いもなく、シェリングの積極的な意欲が強烈に訴えかけてくる演奏だ。

ロマンティシズムに溢れたハイフェッツの演奏と比べれば、シェリングが全く新しい時代の解釈を先取りしていたことが明瞭に理解できるはずだ。

その後も彼は自分のコンサートのプログラムに盛んにこの曲集を採り上げた。

まさに彼が生涯の課題として取り組み、弾き込んだレパートリーのひとつだった。

細部では67年盤の方が自由闊達な躍動感を持っているのに対して、こちらでは一途な、そして静かな情熱の迸りを感じさせる。

確信をもって、しかも力強い説得力を伴って聴かせるシェリングの演奏には、人間の計り知れない力をみる思いがする。

更にこの55年のモノ録音ではヴァイオリンのまろやかで、しかもくっきりとした輪郭を持った美しい音色を堪能できる。

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classicalmusic at 13:27コメント(0)バッハ | シェリング 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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