2019年10月22日
ベルリナーシューレの刹那的美学、ヤーニチュの四重奏曲第2集
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ヨハン・ゴットリープ・ヤーニチュの四重奏曲集の第2集に当たり、今回は室内ソナタの形式による3曲及び教会ソナタ2曲が収録されている。
特に後者の2曲はバロック盛期の様式に則った二重フーガがそれぞれの第2楽章に置かれていて、彼がこうした古い手法にも熟達していた作曲家だったことも興味深い。
アンサンブル・ノットゥルナの演奏は作曲家の生きた時代を反映させた、宮廷風の雅やかな趣と同時に長い戦乱によって荒んだ現実から逃避するような刹那的な美学をも感知させている。
それはまた終焉期を迎えたバロックへの郷愁のようでもあり印象的だ。
こうした四重奏の楽器編成は既にテレマンのパリ・カルテットにも先例が見られるように、後のハイドンの弦楽四重奏曲やモーツァルトのフルート四重奏曲などの萌芽とも考えられる、過渡的な貴重なサンプルと言えるだろう。
尚このディスクは第3集より後の2010年に録音されている。
カナダ・アトマ・レーベルのディスクの音質の素晴らしさは既に第1集のレビューにも書いたが、それぞれのピリオド楽器特有のカラフルな音色が織り成す合奏の醍醐味が堪能できるシリーズとして、古楽の入門者にも是非お薦めしたい。
因みにヤーニチュの作品はここ数年間で幾つかのピリオド・アンサンブルが彼らのレパートリーに取り入れるようになった。
その先駆けとなったのがベルギー・アクサン・レーベルからリリースされたバルトールド・クイケン率いる古楽アンサンブル、パルナッススによるソナタヘ長調で、1979年の演奏だがこの曲に関しては最も優れたセッションと言えるだろう。
アルバムとしてまとめた曲集は、当シリーズの他にやはりアクサンからイル・ガルデッリーノが5曲、ドイツCPOからはエポカ・バロッカによる同様のソナタ集6曲を、またベルギー・シプレからは殆んど唯一のダルムシュタット・シンフォニア集をアンティーキ・ストゥルメンティの演奏で、それぞれ単独のディスクをリリースしている。
アンサンブル・ノットゥルナによる世界初録音4曲を含む16曲まとめたのは、バロックの比較的マイナーな作曲家の作品集としては稀な企画だ。
彼らの意欲的な試みが感じられるし、またヤーニチュの力量とその真価を伝えた演奏集として高く評価したい。
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